仙腸関節

Oct 25, 2026

せんちょうかんせつ|sacroiliac joint; SIJ|関節・運動器

歩くときは、左右の脚が交代で体を支えます。脚と上半身の間で力を伝える経路にあるのが、左右の仙腸関節です。骨盤中央の仙骨と両側の腸骨が接する関節で、お尻の上部の奥に位置しています。 SJ-S1 SJ-P3

仙腸関節には、軟骨で覆われた関節面と、それを支える多くの靱帯があります。骨どうしの動きは小さく、骨盤の輪状の構造を保ちながら荷重を受けます。周囲の筋が発揮する力も、この関節の支え方に関わっています。 SJ-S3 SJ-S4 SJ-P6

骨盤の後方にある左右一対の関節

骨盤の中央後方には、三角形の仙骨があります。その左右には、耳の輪郭に似た「耳状面」があり、腸骨の内側の面と接して仙腸関節をつくっています。耳状面は縦に長く、上部と下部で向きが異なるため、関節面全体が曲がっています。 SJ-S2 SJ-S4

腸骨は、坐骨・恥骨と一体になって寛骨をつくります。左右の寛骨は、後ろでは仙骨と、前では恥骨結合を介して互いにつながっています。こうしてできる骨盤輪の後方を、二つの仙腸関節がつないでいます。 SJ-S1

寛骨の外側には、大腿骨の頭がはまり込む股関節があります。立っているときに腰の背骨から仙骨へ届く力は、仙腸関節から寛骨を通り、股関節へ向かいます。足が地面を押して受ける力も、大腿骨から寛骨と仙骨を介して、体幹へ伝わります。 SJ-S1 SJ-P7

骨盤輪の後方にある仙腸関節
骨盤を前から見た位置図です。仙骨と左右の寛骨をつなぐ仙腸関節を、恥骨結合・股関節と区別しています。着色は関節のおよその位置を示し、関節面全体の形や動きを表すものではありません。

軟骨を介して向き合う関節面

仙腸関節の前方寄りには、軟骨で覆われた骨の面と、関節液を含む狭い空間があり、滑膜関節に分類されます。関節を包む関節包の内側にあるのが滑膜です。関節液は軟骨表面の摩擦を小さくし、血管のない関節軟骨へ栄養を届けます。 SJ-S3 SJ-S4

軟骨の厚さや線維の配列には、仙骨側と腸骨側で違いがあります。1〜93歳の25関節を顕微鏡などで調べた研究では、成人の仙骨側の軟骨は腸骨側より厚く、加齢に伴う表面や細胞の変化も、両側で異なっていました。腸骨側では、軟骨表面の細かな亀裂や細胞の集まり方の変化が、より目立つ傾向にありました。 SJ-P1

主に高齢者の47標本を調べた解剖研究では、向き合う関節面に、互いに対応する盛り上がりとくぼみが観察されています。この凹凸は、その下にある骨にも続いています。関節面の断面では、起伏のある骨の輪郭に沿って、軟骨が覆っています。 SJ-P2

前後と奥から支える靱帯

靱帯は、骨と骨を結ぶ線維の多い丈夫な組織です。仙骨と腸骨をつなぐ靱帯は、関節の周囲に層をつくっています。前面には前仙腸靱帯があり、後ろの深い場所には骨間仙腸靱帯があります。骨間仙腸靱帯は、軟骨を持つ関節部分より後方・上方に広がり、仙骨と腸骨の間を多くの線維で結んでいます。 SJ-S4 SJ-S3

その表面には後仙腸靱帯があります。短い部分と長い部分があり、仙骨の後面と腸骨の後方をつなぎます。短い線維は横方向へ、長い線維は斜め方向へ走っています。骨の位置関係が変わると、それぞれの線維に生じる張力も変わります。 SJ-S5

さらに、仙骨などから坐骨結節へ向かう仙結節靱帯、坐骨棘へ向かう仙棘靱帯も関わります。坐骨結節は座面に接するお尻の下の硬い部分、坐骨棘は坐骨の後方から内向きに張り出す突起です。これらの靱帯は、仙骨の下端が後上方へ動くのを制限し、仙腸関節の回転を支える構造の一部です。 SJ-S6 SJ-S1

荷重を受ける面には二方向の力が加わる

骨盤に荷重が加わると、仙腸関節の面どうしを押し合わせる「圧縮力」と、面に沿って滑らせる「せん断力」が生じます。上半身の重さだけでなく、地面から脚を通って届く力や、筋が骨を引く力も加わります。 SJ-P3 SJ-P7

関節面を押し合わせる力があると、面に沿った滑りへの抵抗が生じます。仙腸関節の力学モデルでは、骨と関節面の形、靱帯の張力、筋力が組み合わさって、せん断力に抵抗する仕組みが検討されています。筋や靱帯は、付着する場所と走る方向に応じて、骨を引き寄せる力を関節へ伝えます。 SJ-P3

左右の足で支えているときと片足で支えているときでは、骨盤のどこから力を受けるかが変わります。骨盤輪の前方にある恥骨結合も含めて力が伝わり、仙腸関節を支える組織への負荷も変わります。 SJ-S1 SJ-P4

椅子に座ると、左右の坐骨結節が座面からの支えを受けます。背もたれの有無や足の接地によって、体を支える場所はさらに変わります。骨盤を前後へ傾けると、股関節や腰椎の位置も変わり、骨盤を通る力の方向が変化します。 SJ-S1

参考記事→姿勢制御

ニューテーションと呼ばれる小さな回転

仙腸関節の運動を表す言葉に、ニューテーションがあります。腸骨に対して仙骨の上端が前下方へ傾き、下端が後上方へ向かう運動です。反対に、上端が後上方へ向かう運動はカウンターニューテーションと呼ばれます。 SJ-S6

腸骨に対して仙骨が前方へ回転したとき、仙骨の側から見れば、腸骨が後方へ回転したことになります。このように、どちらの骨を基準にするかで、回転方向の表し方が変わります。 SJ-P5

骨盤全体を前へ傾けると、仙骨と左右の寛骨が一緒に向きを変え、股関節や腰の背骨も動きます。その全体の動きとは別に、仙腸関節では、仙骨と腸骨の間に生じる小さな回転や並進を測ります。並進とは、骨の向きを変えずに位置が移る動きです。 SJ-S1 SJ-P4

どのくらい動くかは姿勢と荷重から調べる

仙腸関節の動きは小さいため、研究では骨そのものの位置を画像などで測っています。健康な若い成人19人の左側の仙腸関節を、仰向けと立位のMRIで比較した研究では、二つの姿勢の画像を三次元的に重ね合わせ、骨どうしの向きの差を求めています。 SJ-P5

立位になると、腸骨が仙骨に対して後方へ回転していました。その変化の平均は、男性10人で約0.9度、女性9人で約1.7度でした。これは二つの姿勢の間で生じた変化を表しています。 SJ-P5

別の研究では、提供された高齢者6体の骨盤標本を用い、両脚で立つ状態を再現しました。左右の股関節の受け皿を支え、第五腰椎から荷重を加える装置です。筋が骨を引く作用は、ワイヤーで再現しています。 SJ-P4

体重に相当する荷重条件で、仙骨が腸骨に対して下方へ移動する量は平均約0.32ミリでした。小さな回転も測られ、腰椎と仙骨の間では、仙腸関節より大きな回転が観察されました。 SJ-P4

筋の活動も関節の支え方に関わる

仙腸関節の周囲には、大殿筋や脊柱起立筋などが付着しています。これらの筋は、股関節や腰の背骨を動かすとともに、仙骨や寛骨、靱帯に力を伝えます。筋の活動が変わると、仙腸関節を押し合わせる力や、動きへの抵抗も変化します。 SJ-P6 SJ-P3

健康な女性15人の中から、振動の変化を十分に測れる6人を選んだ研究があります。うつ伏せで安静にしているときと、姿勢を保ったまま筋に力を入れたときを比べました。骨盤に小さな振動を加え、腸骨と仙骨への伝わり方を超音波で測る方法です。 SJ-P6

大殿筋、大腿二頭筋、脊柱起立筋などに力を入れる課題では、関節が変形に抵抗する程度が増したと推定されました。この変形への抵抗を、剛性と呼びます。筋が働いている様子も、筋電図で同時に記録しています。 SJ-P6

一部の課題では、対象の筋だけでなく、ほかの筋も一緒に働いていました。測定された剛性の変化には、こうした複数の筋の働きが含まれています。 SJ-P6

関連語

仙骨、靱帯、結合組織、床反力、多裂筋

出典

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