床反力

Oct 21, 2026

ゆかはんりょく|Ground reaction force|生理・バイオメカニクス

洗面台の前に立っているとき、両足は床に触れ、身体の重さを支えています。そこから歩き出すと、片方の足へ重さが移り、もう片方の足が床を離れます。身体を支える足は、一歩ごとに入れ替わっていきます。

床反力(ゆかはんりょく)は、床や地面が、接している身体に及ぼす力です。地面反力とも呼ばれ、英語の略称はGRFです。立っているときの上向きの支えも、歩くときに足が床から受ける前向きの力も、床反力に含まれます。

出典:GR-S1 / GR-T1

足で床を押すときに働く力

足は床を押し、床は足を押しています。この二つの力は同時に働き、同じ大きさで反対向きです。こうした関係を「作用・反作用」と呼び、ニュートンの運動の第三法則として表します。

足が床を押す力は床に働き、床が足を押す力は身体に働きます。床反力という言葉では、このうち身体が受ける力を扱います。足で床を後ろへ押すと、足には床から前向きの力が働きます。歩行中、後ろに残った足で床を押す場面では、この前向きの力が身体を進める働きをします。

硬い床も、押されるとごくわずかに変形します。足の裏や靴底にも変形が生じ、接している面を通して力が伝わります。足を止めて立っている間も、床と足は押し合っています。

出典:GR-S1 / GR-S2

床反力床に接する靴を側面から示す模式図。足に働く上向きの床反力と、床に働く下向きの力を、同じ大きさで反対向きの矢印として描き、二つの力が働く対象は異なると説明しています。
足と床が接して押し合うとき、床が足に及ぼす力が床反力です。図は上向きの床反力を示す説明例です。反対向きに足が床へ及ぼす力も同時に働きます。二つの力は同じ大きさですが、働く対象が異なります。

両足で身体を支える

水平な床の上で、ほかの物につかまらずに静止している人を考えます。身体には地球から下向きの重力が働き、左右の足には床から上向きの力が働いています。両足が受ける上向きの床反力を合計すると、下向きの重力とつり合います。

力の大きさを表す単位はニュートンで、Nと書きます。体重60kgの人に働く重力は、地表近くで約590Nです。この人が静止していれば、両足の上向きの床反力も合計で約590Nになります。左右で均等に支えているときは、片足あたり約295Nです。

そこから右足へ重さを移し、その姿勢で静止すると、右側の上向きの力が増え、左側が減ります。両足の合計は約590Nのまま、左右の分担が変わります。手すりを手で押して体重の一部を預けると、手すりから手を押し返す力も支えに加わり、その分、足が受ける上向きの力は小さくなります。

参考記事→床支点

出典:GR-S1 / GR-S2 / GR-S3

しゃがみ始めるときと止まるとき

両足をつけたまま膝を曲げていくと、頭や胴体が下がります。身体全体がどのように移動したかを表すために使うのが、重心です。頭、胴体、腕、脚など、それぞれの質量と位置をもとに求める点で、腕を上げたり腰を曲げたりすると位置が変わります。

ほかの物につかまらずにしゃがむ場面では、上向きの床反力と下向きの重力の差が、重心の動く速さを変えます。しゃがみ始めに、上向きの床反力の合計が重力より小さくなると、重心は下向きに加速します。速さや方向が時間とともに変わる度合いを、加速度と呼びます。

膝を曲げた位置で止まるには、それまでの下降を遅くする必要があります。この間は、上向きの床反力の合計が重力を上回ります。身体はまだ下へ動いていますが、上向きの力が大きいため、下降の速さが落ちていきます。しゃがんだ姿勢で静止すると、上下の力は再びつり合います。

立ち上がり始めには、上向きの床反力が重力を上回り、重心が上へ加速します。立った姿勢で止まる手前では、上向きの床反力が重力より小さくなる時間があり、上昇の速さが落ちます。静止したところで、両足に働く上向きの力は重力と同じ大きさに戻ります。

出典:GR-S2 / GR-S3 / GR-S4

歩くときに変わる力の向き

歩いている足は、上向きの支えに加え、床に沿う前後や左右の力も受けています。床反力はこの三方向に分けて記録でき、各方向の力を「成分」と呼びます。水平な床では、上向きの成分は床に垂直な力、水平方向の成分は床と足の間の摩擦による力です。

平地を普段の速さで歩く人の右足を、着地から追ってみましょう。右足が身体の前に着いて重さを受け止める間、その足には床から後ろ向きの力が加わります。この成分は、前へ進む動きを遅くする方向に働きます。

身体が右足の上を通り過ぎると、右足は身体の後ろに残ります。今度は足で床を後ろへ押し、床から前向きの力を受けます。この成分が、身体を前へ進める働きをします。かかとが上がり、つま先まで床を離れると、右足が受ける床反力はゼロになります。

右足が離れる前には、左足も前方の床に着いています。この両足が接している時間には、後ろの足で前へ進める力を受けながら、前の足で受け止める力を受けます。身体全体の前後の加速度は、両足に働く前後の力を合わせて決まります。

出典:GR-S1 / GR-S2 / GR-P4

足裏に広がる力と圧力中心

足が床に着いている間、力はかかとや指の付け根など、接している範囲に広がっています。床反力は、この範囲に働く力をまとめたものです。足裏の各場所にかかる垂直方向の力を一つの力で表すとき、その力が働く位置を「圧力中心」と呼びます。英語ではcenter of pressure、略してCOPです。

かかと側が受ける力の割合が増えると、COPは後ろへ移ります。指の付け根側の割合が増えると、前へ移ります。たとえば、かかとに重さが多くかかっていても、前側にかかる力があれば、COPはその両方をまとめた位置に求められます。

左右の足を合わせたCOPも求められます。両足が同じ大きさの上向きの力を受けていれば、合成したCOPは、左右それぞれのCOPを結んだ線の中点にあります。二つの足が離れていれば、その中点は足の間の床に位置します。

左右それぞれのCOPの位置を保って、右足の荷重を増やすと、合成したCOPは右側へ寄ります。足ごとのCOPの位置と、各足が受ける力の大きさの両方が、合成した位置に反映されます。

身体各部の位置と質量から求めた重心の動きと、床面で測ったCOPの移動を記録すると、身体の揺れと足裏の支え方を同じ時間軸で追えます。静かに立っている人の研究でも、重心とCOPの小さな移動が測定されています。

出典:GR-T2 / GR-S4 / GR-P2

床反力計で動きの経過を読む

床反力計は、人が立ったり、歩いて通過したりできる板状の計測装置です。多軸の床反力計は、三方向の力と、物体を回そうとする力の働きであるモーメントを測ります。装置の上にかかる力とモーメントから、COPの位置も求められます。

横軸を時間、縦軸を力にして記録すると、接地から足が離れるまでの変化が曲線になります。前後方向の記録には、足が前に着いたときの後ろ向きの力と、後ろから押し出すときの前向きの力が現れます。左右の足を別々の板で測れば、両足が着いている間の力も、足ごとに記録できます。

歩く速さを変えると、記録の形も変わります。健康な男性12人の歩行と走行を調べた研究では、速度が上がるにつれて接地時間が短くなり、力の最大値が大きくなりました。

膝の曲げ伸ばしを記録した場合、60kgの人なら、静止中の約590Nを基準の線として引けます。しゃがみ始めには曲線がこの線より下へ、下降を止めるときには上へ移ります。映像ではまだ身体が下がっていても、力の曲線はすでに基準を超えています。その間、下降の速さが落ちていきます。

出典:GR-T1 / GR-T2 / GR-S3 / GR-P3

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関連語

重力/重心/圧力中心/支持基底面/摩擦

参考文献

  • GR-S4|Ling SJ, Sanny J, Moebs W. 9.6 Center of Mass. University Physics Volume 1. OpenStax; 2016.(公開教科書)
  • GR-T1|Bertec Corporation. Force Plates. メーカー公式技術仕様ページ. 2026年10月15日確認.(計測装置の一次技術資料)
  • GR-T2|Bertec Corporation. Force Plate Manual. メーカー公式配布技術マニュアル。公開PDF全31ページ。(計測装置の一次技術資料)
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