「ウェイトナビゲーション」は、体の一部や全体の重さを使って全身を連動させ、効率よく動くための感覚・手法です。JINENでは「重心移動」とほぼ同じ意味で使います。手足や胴体の重さの移動を生かし、一か所だけを頑張って動かすのではなく、全身がつながって動く感覚を探します。
肋骨まわりの重さから、全身の動きへ
参考記事→重心移動
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胸を出す、腰を曲げる、膝を曲げる。動こうとすると、一か所ずつ形を作りたくなることがあります。このワークでは、まず肋骨まわりの重さがどちらへ移るかに注意を向けます。その重さの移動に続いて背骨が前後にしなり、骨盤や股関節、膝も動く。こうした全身のつながりを、ひと続きの動作として感じます。
「肋骨の重さ」とは、胸まわりの重さを感じるための呼び方です。骨だけを切り離して動かすという意味ではありません。胸の位置が少し変わると、背中や腰の形はどう変わるでしょうか。股関節や膝も、それに続いて曲がったり伸びたりするでしょうか。胸だけが前後しているのか、ほかの場所も続いて動いているのかを確かめます。
ここでいう「波」は、背骨が前後にしなる動きに、股関節や膝がついてくる様子を表しています。胸、腰、膝を同時に同じだけ動かそうとせず、どこから動きが始まり、次にどこが動くかを感じます。体内を特別なエネルギーが流れるという意味ではありません。
参考記事→背骨の3つの動き
小さな動きで、つながる順番を感じる
立って行うときは足を安定して置き、前後に倒れそうにならない範囲で始めます。ワークの指導に沿って胸まわりを小さく動かし、背骨や股関節、膝の変化を追います。腰だけを大きく反らせたり、膝を伸ばし切って固定したりして、波の形を作ろうとしないでください。痛みやふらつきがあれば止め、動作を小さくするか休みます。
最初は動く範囲よりも、動く順番に注目します。「胸が動いたあとに膝が曲がった」「腰を先に動かそうとして胸の重さが分からなくなった」など、感じたことを短く言葉にしてみましょう。途中で動きが止まったら、勢いで動かそうとせず、ゆっくりとした小さな動きに戻ります。全身を一度に思いどおりに動かそうとするよりも、重さと動きのつながりを一つずつ確かめます。
手足の重さに全身が引かれる動きも、考え方は同じです。動き始める部位が変わっても、重さの移動にほかの場所がどう続くかを感じます。肋骨まわりから始めるワークでは、背骨の前後のウェーブと、それに続く股関節・膝の動きを丁寧に感じましょう。
科学的な補足
体の各部には質量があり、重力が働きます。部位の位置や関節の角度が変わると、重さが関節を回転させる働きも変わります。骨や関節のてこの関係は、姿勢によって筋肉の働き方が変わることを考える基礎になります。筋肉・関節に働く力とトルク(OpenStax)
「重さに導かれる」は、動きの感覚をつかむための表現です。動き始めるときや止まるとき、速度を変えるときには筋肉も働きます。「効率よく動く」は、重さの移動を生かして全身を動かすというJINENの実践上の目標です。引用した力学の資料は、肋骨から膝へ動く順序や、この練習による運動効率の改善を検証したものではありません。
ほかの動作にも生かす
胸を動かしたあと、背中、股関節、膝がどう変わったかを振り返りましょう。別々に曲げ伸ばししていた場所が、重さの移動に続く一連の動きとして感じられるでしょうか。肋骨まわりの小さなウェーブは、それを確かめる方法の一つです。体の重さを生かして全身の連動を探す、この見方をほかの動作にも広げてみましょう。