かくしょうばいあす|confirmation bias|心理学
気になるカメラを見つけ、評判を調べ始めました。「この機種は使いやすそうだ」と思って検索すると、操作の簡単さをほめる記事が目に留まります。使いにくいという感想に出会っても、「この人は設定に慣れていないのだろう」と受け流します。いくつもの記事を読んだ末に、最初の印象がますます確かになりました。 C1
確証バイアスとは、すでに持っている考えや予想に合う方向へ、情報の集め方や解釈が偏る傾向です。英語ではconfirmation biasといいます。予想に合う記事を選んで読むことにも、同じ記事の長所と短所を違う基準で評価することにも現れます。 C1
心配している見方を支える材料が集まることもあります。「あの人は自分を避けている」と思い始めると、短い返事や、目が合わなかった場面が気になります。親切に声をかけられたことは「気を遣っただけ」と受け止めます。好意を示すように見える出来事まで、避けられているという見方に収めてしまいます。 C1
「2、4、6」に隠れている規則
心理学者ピーター・ウェイソンは、1960年に、数の並びの規則を見つける実験を報告しました。参加者には「2、4、6」が規則に合っていると伝えられます。自分で三つの数を提案するたび、実験者が規則に合うかどうかを教えます。規則がわかったと思ったところで答え、誤りだと告げられた場合は、さらに数を提案して考え直すことができました。 C2
「二つずつ増えるのだろう」と考えて、「8、10、12」「14、16、18」を試せば、どちらも規則に合うという返事が来ます。確認するほど、自分の予想が正しそうに思えます。ところが、実験者の規則は、もっと広く「三つの数が順に大きくなる」ことでした。二つずつ増える必要はなく、「1、2、5」も規則に合います。 C2 C3
二十九人のうち、誤った規則を先に答えずに正しい規則へ到達したのは六人でした。誤った答えの多くは、正解より狭い範囲の数列だけを指す規則でした。自分の予想に合う数列を確かめるだけでは、その範囲の狭さに気づきにくかったのです。 C2
二つの規則に当てはまる数列
「8、10、12」は、「二つずつ増える」にも、「順に大きくなる」にも当てはまります。だから、この例が受け入れられても、二つの候補のどちらが正しいかは決まりません。「1、2、5」なら、前の候補からは外れ、後の候補には当てはまります。 C2 C3
逆向きの「6、4、2」も試せます。この数列は両方の規則から外れているので、「合わない」という返事が来ても、どちらの規則が正しいかは決まりません。「1、2、5」のように、候補によって予測する答えが分かれる数列は、その違いを確かめる材料になります。 C3
予想が当たっていれば規則に合うはずの例を試す方法を、肯定的検証方略といいます。クレイマンとハは、1987年に、この方法の有効性を分析しました。予想に沿って試しても、結果が予想と違えば考えを見直せます。ウェイソンの課題では、狭い予想に合う例が広い正解にもすべて含まれるため、試すたびに「規則に合う」という返事が来てしまいます。 C3
たとえば、「このカメラなら暗い室内でも鮮明に撮れる」と予想して、実際に暗い部屋で撮ってみます。写りが悪ければ、予想を見直す材料になります。期待どおりになるはずの条件を試すことによって、期待に反する結果も得られます。数列課題で二つずつ増える例を試し続ける場合には、このような結果が返ってくる余地がありません。 C3
読みたい情報を選ぶ段階から始まる
カメラの評判を調べるとき、「初心者にも使いやすい理由」という記事と、「購入前に知っておきたい操作上の難点」という記事が並んでいたら、どちらを開くでしょうか。使いやすいはずだと思っていれば、前者は自分の見方に沿って読めます。後者では、期待していた選択を考え直すことになるかもしれません。 C1 C5
自分の意見に合う情報と、反する情報のどちらに触れるかを選ぶことは、選択的接触として研究されてきました。ハートらは2009年に、複数の研究結果をまとめて検討するメタ分析を行いました。九十一研究を総合すると、平均して、自分の態度や信念に合う情報を好む傾向が見られました。 C5
この分析では、自分の立場を保ちたい動機と、正確に知りたい動機の両方が検討されました。反対の情報が、いま取り組む課題により役立つ条件では、そちらを好む傾向も見られました。たとえば討論を控えている場合には、相手側の主張を知ることが反論の準備に役立ちます。 C5
カメラでも、買う楽しみを膨らませているときには、きれいに撮れた写真を眺めたくなります。旅行先で素早く操作できるかを確かめたいときには、切り替えに手間取ったという経験談が役立ちます。機種に好感を持ったままでも、必要な判断が変わると、難点を詳しく読む理由が生まれます。 C5
同じ資料でも、評価の厳しさが変わる
情報を選ぶ段階を過ぎても、評価には違いが生まれます。ロード、ロス、レッパーは、1979年に、死刑に賛成し犯罪抑止効果を信じる学生二十四人と、反対し抑止効果を疑う学生二十四人に、二つの研究資料を読んでもらいました。一つは抑止効果を支持し、もう一つは支持しないという内容でした。資料は、実験用に作られた架空の研究です。 C4
資料には、死刑の導入前後で殺人率を比べる研究と、制度の違う隣り合う州を比べる研究がありました。それぞれの比較方法に対し、抑止効果を支持する結果と支持しない結果を入れ替えた資料が用意され、読む順序も調整されていました。 C4
参加者は、研究の方法と結果、研究への批判、批判に対する反論まで読んでから、研究の質と説得力を評価しました。どちらの立場の学生も、自分のもとの考えに合う結果を示す研究を高く評価する傾向がありました。参加者のコメントにも、同じ研究について、データの集め方を評価するものと、比較する州の選び方やほかの原因を問題にするものがありました。 C4
たとえば「導入後に殺人率が下がった」という結果からは、抑止効果があったという読み方も、同じ時期の別の変化が影響したのではないかという疑問も生まれます。こうした検討点のどこを重く見るかがもとの考えに沿って偏ると、両方の資料を読んでも、自分の立場を支える証拠のほうが強いと感じやすくなります。 C4
相手への質問が、答えの形を変える
人についての予想は、質問の内容にも入り込みます。スナイダーとスワンは、1978年に、女子大学生に、相手が外向的か、内向的かという仮説を検討するための質問を選んでもらいました。外向性を確かめる条件では、人と積極的に関わる場面についての質問が多く選ばれ、内向性を確かめる条件では、人づきあいの難しさなどを尋ねる質問が多く選ばれました。 C6
続く面接の研究では、質問された側の回答を録音しました。仮説を知らず、回答部分の音声だけを聞いた第三者にも、質問の条件に沿った印象の違いが生まれました。外向性を確かめる面接への回答を聞いた人は、内向性を確かめる面接への回答を聞いた人より、その話し手を外向的だと評価しました。 C6
たとえば、人前で話した経験を尋ねられれば、その場面を思い出して話します。一人で過ごす場面について尋ねられれば、そちらの経験を語ります。同じ人にも、さまざまな振る舞いの経験があります。質問によってその一部が会話に多く現れると、聞き手には「やはりそういう人だ」と映ります。 C6
質問文と場面は説明例です。原著では、回答音声を聞いた独立した評価者の印象も調べています。
関連記事
出典
- C1 Raymond S. Nickerson (1998). Confirmation Bias: A Ubiquitous Phenomenon in Many Guises. Review of General Psychology, 2(2), 175–220. DOI: 10.1037/1089-2680.2.2.175
- C2 Peter C. Wason (1960). On the Failure to Eliminate Hypotheses in a Conceptual Task. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 12(3), 129–140. DOI: 10.1080/17470216008416717
- C3 Joshua Klayman & Young-Won Ha (1987). Confirmation, Disconfirmation, and Information in Hypothesis Testing. Psychological Review, 94(2), 211–228. DOI: 10.1037/0033-295X.94.2.211
- C4 Charles G. Lord, Lee Ross & Mark R. Lepper (1979). Biased Assimilation and Attitude Polarization: The Effects of Prior Theories on Subsequently Considered Evidence. Journal of Personality and Social Psychology, 37(11), 2098–2109. DOI: 10.1037/0022-3514.37.11.2098
- C5 William Hart, Dolores Albarracín, Alice H. Eagly, Inge Brechan, Matthew J. Lindberg & Lisa Merrill (2009). Feeling Validated Versus Being Correct: A Meta-Analysis of Selective Exposure to Information. Psychological Bulletin, 135(4), 555–588. DOI: 10.1037/a0015701
- C6 Mark Snyder & William B. Swann, Jr. (1978). Hypothesis-Testing Processes in Social Interaction. Journal of Personality and Social Psychology, 36(11), 1202–1212. DOI: 10.1037/0022-3514.36.11.1202