JINENでいう「3本の軸」は、背骨を中心とする軸と、左右の体側を通る軸を使い、腕・体幹・股関節を連動させる捉え方です。背中をまっすぐにするだけで姿勢を保つのではなく、脇の下から肋骨の横、骨盤、股関節へと続く左右の働きも使います。体に3本の線を思い浮かべるだけではありません。肩甲骨や脇まわりと、腸腰筋や股関節の働きをつなげ、手足を動かしても全身で重さを受け止めることが大切です。
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例えば、片手で買い物袋を持つ場面を考えてみてください。手と腕だけで持ち上げようとすると、肩をすくめたり背中を固めたりすることがあります。そこで、小指側まで使って持ち手を握り、脇に軽い締まりを感じながら、荷物の重さを脇、体側、股関節、足裏へと預けるように持ってみます。腕と同じ側の股関節までを一緒に使うこの感覚を、JINENでは左右の軸が働くこととして捉えます。
このとき、上半身で重要になるのが前鋸筋です。肋骨と肩甲骨をつなぐ筋肉で、腕を伸ばしたり床を押したりするときに、肩甲骨が肋骨に沿って動くことに関わります。肩を持ち上げることばかりで腕を動かさず、脇の下から胸郭までを腕の動きに参加させる。その手がかりが、前鋸筋のある脇まわりの感覚です。
下半身では、腸腰筋の働きが関わります。体の奥で、腰椎や骨盤と大腿骨を結ぶ筋肉です。JINENでは、脚を太ももの力だけで動かさず、股関節の奥から動かすことを重視します。腕を動かすときも、肩甲骨や脇まわりだけで終わらせず、腸腰筋が関わる股関節の動きと組み合わせます。前鋸筋と腸腰筋を別々に強く縮めるのではありません。手で押す、荷物を持つ、体重を移すといった一つの動作の中で、上半身と下半身が協力することを目指します。
参考記事→腸腰筋
腕と左右の軸をつなぐ手がかりが「下筋(したすじ)」です。JINENでは、小指側から腕の裏側、脇の下へと続く働きを捉える、武術由来の呼び方として使います。脇では前鋸筋や広背筋などの働きに注目します。「脇を締める」「小指側を使う」も、腕を胴体とつなげて使うための言葉です。肩を押し下げたり、脇を強く挟み続けたりするのではなく、動いている間も腕と体側のつながりを感じられる程度の締まりを保ちます。
参考記事→長い腕
感覚を確かめるには、反対の手で、小指側から手首、肘、脇の下、脇腹、股関節へと優しくさすってみます。そのあと軽い袋を持ち、首や肩の力み、脇の感覚、足裏にかかる重さを比べます。左右を替えると、感じやすさの違いも分かります。重い荷物で試す必要はなく、痛みが出る持ち方は避けます。
科学的な補足
解剖学では、前鋸筋は肋骨から肩甲骨の内側縁につき、肩甲骨を前へ動かしたり、腕を上げるときに肩甲骨を上方へ回したりする働きをもちます。腸腰筋は大腰筋と腸骨筋を合わせた呼び方で、股関節を曲げる働きなどがあります。広背筋は背中側から上腕骨につき、腕を体に近づける、後ろへ引くなどの動きに関わります。これらは、付着部も働きも異なる筋肉です。
Texas Tech大学医学部:前鋸筋と肩周囲の解剖 Texas Tech大学医学部:腸腰筋の解剖 ワシントン大学:広背筋の解剖
「下筋」は、この範囲全体を指す標準的な解剖学上の筋名ではありません。また、「3本の軸」も、解剖図に3本の独立した組織として見つかるものではありません。ここでいう機能的なつながりは、異なる筋肉や関節が一つの動作の中で協力して働く、という意味です。前鋸筋から腸腰筋へ一本の筋肉が続いている、あるいは力が必ずその順番だけで流れる、という説明とは区別します。
3本の軸を知ると、荷物を持つ、手を伸ばす、歩くといった動作を、手足だけの仕事として見なくなります。肩をすくめていないか、脇と股関節が一緒に働いているか、足裏まで重さを感じられるか。こうした手がかりから、首や肩に仕事を集め過ぎない動き方を探せることが、この言葉の実用性です。