骨盤底筋群

Oct 23, 2026

こつばんていきんぐん|Pelvic floor muscles|解剖・組織

骨盤底筋群は、骨盤内の臓器を支え、尿や便の通り道を閉じたり、通しやすくしたりする働きに関わる筋肉です。椅子に腰を下ろすと、お尻の下の左右の骨で身体を支える感触があります。この骨の出っ張りを「坐骨結節」といいます。その内側、身体の奥に広がっているのが骨盤底筋群です。 PF-S1 PF-S2

骨盤底筋群という言葉は、肛門挙筋と尾骨筋を中心に、尿道や肛門の周囲、会陰の筋肉まで含めた広い意味で使われます。英語では pelvic floor muscles といい、PFM と略されます。 PF-S2 PF-S3

骨盤の底はどこにあるか

骨盤は、左右の寛骨と、背骨の下端にある仙骨・尾骨からできています。寛骨は、腸骨・坐骨・恥骨が一つになった骨です。前側に恥骨、左右の下方に坐骨、後ろ側に仙骨と尾骨があり、これらの骨の内側に骨盤底が広がっています。 PF-S1

骨盤底の上には、膀胱や直腸などが収まる「骨盤腔」という空間があります。その上は、お腹の内部の空間である「腹腔」につながっています。骨盤底の筋肉を包むのは、結合組織の一種である筋膜です。臓器の周囲にも結合組織があり、筋肉とともに臓器を支えています。 PF-S2 PF-S3 PF-S10

骨盤底の中心となる筋肉の層より下の領域を「会陰」といいます。解剖学では、前は恥骨結合、後ろは尾骨、左右は坐骨結節に囲まれた範囲を指します。恥骨結合は、左右の恥骨が前でつながる部分です。会陰の前側には外陰部が、後ろ側には肛門があります。 PF-S4

広く支える筋肉と通り道の周囲の筋肉

骨盤底の大きな部分をつくるのが、左右の肛門挙筋です。恥骨や骨盤の内壁の筋膜から中央へ広がり、臓器の周囲や尾骨側につながっています。左右の筋肉がつくる面は、上から見ると中央がくぼんでいます。その後ろにあるのが尾骨筋です。これらの筋肉と、それを包む筋膜を合わせて「骨盤隔膜」といいます。 PF-S2 PF-S5 PF-S11

参考記事→ファシア(筋膜)

肛門挙筋は、恥骨直腸筋、恥骨尾骨筋、腸骨尾骨筋などに分けて説明されます。恥骨直腸筋は、左右の恥骨から、直腸と肛門管の境目の後ろへ回り込む筋肉です。前側が開いたU字形をしており、その周囲に恥骨尾骨筋や腸骨尾骨筋が広がっています。 PF-S5

骨盤底筋群骨盤を斜めから見た模式図。肛門挙筋と尾骨筋が骨盤の底に広がる位置関係を示す。肛門挙筋の内訳を括弧で示し、周囲にある梨状筋は別の筋と説明している。

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肛門挙筋と尾骨筋の位置関係を、骨盤を斜めから見た模式図で示しています。梨状筋は周囲にある別の筋です。筋の細分の境界や付着位置を精密に示す図ではありません。

尿道の周囲には外尿道括約筋、肛門管の周囲には外肛門括約筋があります。「括約筋」とは、通り道を締める筋肉のことです。会陰には、外陰部の根元に沿う球海綿体筋や坐骨海綿体筋、左右から中央へ横向きに走る浅会陰横筋などもあります。これらは、骨盤隔膜よりも身体の表面に近い位置にある筋肉です。 PF-S3 PF-S4

会陰の中央、肛門の前にある「会陰体」は、筋線維と結合組織が集まる部分です。女性では腟口と肛門の間、男性では陰茎の根元と肛門の間にあります。浅会陰横筋や球海綿体筋などが、ここにつながっています。 PF-S12

臓器と開口部の配置

骨盤の中では、前側に膀胱、後ろ側に直腸があります。膀胱にたまった尿は、尿道を通って身体の外へ出ます。直腸は大腸の終わりに近い部分で、その先が肛門管につながります。尿道や肛門管は、骨盤底の筋肉の間を通って体外へ続いています。 PF-S6 PF-S7 PF-S8

女性では、尿道と直腸の間に腟があり、その上に子宮があります。骨盤底を通る管を前から並べると、尿道、腟、肛門管の順になります。男性で骨盤底を通るのは尿道と肛門管です。尿道は、膀胱のすぐ下にある前立腺も通過します。周囲の筋肉や結合組織は、こうした臓器の配置に沿ってつながっています。 PF-S4 PF-S7 PF-S8

尿や便がたまると、膀胱や直腸の大きさと形が変わります。その重みを下で受け止めるのが、筋肉の引っ張る力である「張力」と、結合組織の張りです。尿道や腟、肛門管が通る中央の部分にも、周囲の筋肉から支える力が伝わります。 PF-S3 PF-S6 PF-S11

収縮すると内側へ引き上がる

骨盤底筋群を自分の意思で収縮させると、尿道や肛門の周囲が締まり、骨盤底が身体の内側へ引き上がります。肛門挙筋の収縮によって、中央の管が通るすき間も狭くなります。収縮を緩めると筋肉の張りが減り、引き上がっていた部分が休んでいるときの位置へ戻ります。 PF-S3

肛門挙筋や外括約筋は、腕や脚を動かす筋肉と同じ「骨格筋」です。神経から届く指令で力を出し、意識して締めることもできます。一方で、咳や手足の運動に合わせて、意識して締めようとしなくても活動が変化します。 PF-S3 PF-P1

咳でお腹の筋肉が強く働くと、お腹の内部の圧力である「腹腔内圧」が高まります。その圧力は骨盤の内部にも伝わり、骨盤底を出口の方向へ押します。骨盤底の筋肉や結合組織は、この力を受けながら臓器を支えます。内側から押す力と、それを支える力の関係によって、骨盤底の形や位置が変わるのです。 PF-S3 PF-S4

尿や便をためるときと出すとき

尿をためている間は、膀胱の壁の筋肉が緩み、尿が増えるにつれて膀胱が広がります。尿道を閉じておく働きには、外尿道括約筋や骨盤底筋群も関わります。排尿するときは、尿道を閉じていた筋肉や骨盤底が緩み、膀胱の壁の筋肉が収縮して尿を送り出します。 PF-S3 PF-S6

肛門管の周囲には、内側に内肛門括約筋、その外側に外肛門括約筋があります。内肛門括約筋は「平滑筋」という種類の筋肉で、意識して締め続けなくても緊張を保ちます。便をためておく間は、外肛門括約筋も働きます。便意があっても排便を待ちたいときには、こちらを意識して締めることができます。 PF-S9

恥骨直腸筋も、便をためておくために働きます。直腸と肛門管の境目を前へ引き、そこに曲がりをつくります。排便するときには、内・外の肛門括約筋が緩み、恥骨直腸筋の引く力も減ります。すると直腸と肛門管の曲がりが緩やかになり、便が通りやすくなります。直腸側から便を送る動きと、出口を開く動きが組み合わさっているのです。 PF-S5 PF-S9

呼吸に伴って上下に動く

息を吸うと、胸とお腹の境目にある横隔膜が下がり、お腹の内部の圧力や形も変わります。腹腔と骨盤腔はつながっているため、この変化は骨盤底にも伝わります。 PF-S4 PF-S10

2011年に発表されたTalaszらの研究では、出産経験のない健康な女性8人の呼吸をMRIで調べました。横隔膜と骨盤底は、息を吸うときに足の方向へ、吐くときに頭の方向へ移動していました。腹部の幅にも、呼吸と同じ周期の変化がみられました。 PF-P2

呼吸に伴う変化は、筋肉の電気的な活動を記録する「筋電図」でも調べられています。Hodgesらの実験では、女性に立って静かに呼吸してもらい、腟から活動を記録しました。吸うときにも活動がみられ、吐くときにはその活動が大きくなっていました。 PF-P1

腕を動かすときにも活動する

立ったまま腕を素早く動かすと、その反作用で体幹にも力が加わります。Hodgesらは2007年の研究で、女性6人と男性1人に立って腕を動かしてもらい、骨盤底筋群の活動を筋電図で調べました。 PF-P1

腕を一度素早く動かす課題では、肩の三角筋が活動するより前に、骨盤底の活動が増えました。腕が動き出す前から、その動作に伴う力に備えていたことになります。腕を繰り返し動かす課題では、活動が続く中で、一回ごとの動きに応じた変化も重なっていました。 PF-P1

参考記事→フィードフォワード

腕を繰り返し動かしながら呼吸を続けた場合、骨盤底の活動は、主に腕を動かす周期に合わせて変化していました。 PF-P1

関連語

腹腔内圧/横隔膜/腹横筋/骨盤/筋膜

参考文献

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