ふれーみんぐこうか|framing effect|行動経済学
ひき肉の表示に、「赤身75%」と書いてあります。別の表示には、「脂肪25%」とあります。同じ肉の構成を、反対の側から述べたものです。それでも、どちらの表現を目にするかによって、おいしそうか、脂っこそうかという印象が変わることがあります。
同じ事柄でも、どのような枠組みで表現し、提示するかによって、人の評価や選択が変わることを、フレーミング効果といいます。英語ではframing effectです。フレームは、出来事を捉える枠組みを意味します。
吹き出しは印象の説明例。研究参加者の逐語発言として扱わない。
表示を読むとき、実際に味わうとき
このひき肉の例は、アーウィン・レヴィンらの1988年の研究に基づいています。研究では、同じ肉について「75%lean」または「25%fat」という情報を伝え、味や品質、脂っこさなどを評価してもらいました。冒頭の「赤身75%」「脂肪25%」は、この表示を日本語にしたものです。
表示だけを読んだ先行研究では、「75%lean」の表示を見たグループの方が、おいしさや品質を高く評価しました。肯定的な表現が、商品のよい特徴を思い出したり想像したりする手がかりになる、と研究者は考えました。
1988年の研究では、表示を知ってから試食するグループと、試食してから表示を知るグループを設けました。試食を伴う条件では、表示だけの先行研究に比べ、ラベルによる評価の差が小さくなりました。
肉を口にすると、表示に加えて、実際の味や脂っこさが判断の材料になります。研究者は、こうした経験の情報が加わったことで、ラベルから受ける印象の影響が薄まったと説明しました。
助かる人数を伝えるか、亡くなる人数を伝えるか
選択そのものが変わる例としてよく知られているのが、エイモス・トヴェルスキーとダニエル・カーネマンの1981年の研究です。参加者は、600人が亡くなると予想される病気の流行に対し、二つの対策から一つを選ぶという、仮想の課題を読みました。
あるグループには、「200人が助かる」対策Aと、「三分の一の確率で600人全員が助かり、三分の二の確率で誰も助からない」対策Bが示されました。Aでは助かる人数が決まっています。このグループでは、72%がAを選びました。
別のグループには、「400人が亡くなる」対策Cと、「三分の一の確率で誰も亡くならず、三分の二の確率で600人全員が亡くなる」対策Dが示されました。こちらでは、78%が不確実なDを選びました。
600人全体について、結果を正確な人数で読むと、二組の対策が対応します。Aで200人が助かれば、残る400人は亡くなります。これはCと同じです。Bで全員が助かる三分の一の可能性は、Dの誰も亡くならない三分の一の可能性と一致します。Bで誰も助からない場合も、Dで全員が亡くなる場合と同じです。
同じ結果と確率を表す二通りの説明で、助かる人数を伝えたグループと、亡くなる人数を伝えたグループでは、支持された対策が異なりました。
この節の出典:F2
何が判断の中心に置かれるのか
選択肢を読むとき、細かな人数や確率とともに、「誰かが助かる」「誰も助からない」という大まかな意味を捉えることがあります。心理学者ヴァレリー・レイナらは、このような意味の捉え方に注目して研究しています。
「200人が助かる」Aでは、確実に誰かを救えます。比べるBには、誰も助からない可能性があります。失われる命を述べたCでは、確実に犠牲が出ることが目立ち、Dには犠牲を出さずに済む可能性が残ります。助かるか失うかを述べる言葉によって、確実な結果と、ゼロになる可能性の意味も変わると考えるのです。
プロスペクト理論では、判断の起点となる参照点からの利得と損失を評価し、そこに確率が選択へ与える重みを組み合わせます。「助けられる人数」を成果として見るか、「失う人数」を損失として見るかによって、確実な案と不確実な案の魅力が変わることを説明します。
「200人」は、ちょうど200人なのか
同じ文章を読んでも、数字にどこまでの意味を含めるかが違うことがあります。「200人が助かる」を「少なくとも200人は助かる」と受け取れば、もっと多くの人が助かる余地が残ります。「ちょうど200人が助かる」と受け取ったときとは、想像する対策の結果が変わります。
デイヴィッド・マンデルの2014年の研究では、「ちょうど」と「少なくとも」を明示した課題を比較しました。「ちょうど」と書かれた条件では、助かる人数と亡くなる人数の二通りの説明を読んでも、対応する同じ案を選ぶ参加者が多数派になりました。
クリスティーナ・チックらの2016年の研究は、教示や具体例、小テストを使い、参加者が省略された側の人数をどう補って理解するかを確かめました。「200人が助かるなら400人が亡くなる」と理解している参加者にも、表現による選択の違いが見られています。
商品の評価、リスクの選択、行動への呼びかけ
ひき肉の印象と、病気の対策を選ぶ課題では、言い換える内容も、答えてもらうことも違います。レヴィンらは1998年、肯定的・否定的な表現を使う研究を、三つの型に整理しました。
ある特徴の表し方を変え、その物の印象を調べるのが、属性フレーミングです。ひき肉では、脂肪と赤身のどちらの割合を伝えるかを変えています。確実な案と不確実な案の選ばれ方を調べるのは、リスク選択フレーミングです。600人の課題がその例です。
参考記事→アンカリング
もう一つは、行動を促すときの目標フレーミングです。たとえば節電の案内で、「使わない照明を消すと、電気代を節約できます」と伝えるか、「つけたままだと、余分な電気代がかかります」と伝えるかという違いです。どちらも照明を消すことを勧めていますが、実行した場合の利点と、実行しない場合の不利益のどちらを示すかが変わります。
研究では、回答の求め方も効果の現れ方に関わります。アントン・キューベルガーは、多数のリスク選択研究をまとめるメタ分析で、二つから一つを選んでもらう場合と、各案を点数で評価してもらう場合など、課題の作り方によって効果の大きさが変わることを示しました。
「半分入っている」という言葉の背景
表現には、話す人が何を基準に見ているかも表れます。クレイグ・マッケンジーとジョナサン・ネルソンは2003年、容器の水位が変わった仮想の場面を読んでもらい、半分まで水が入った容器をどう説明するか調べました。
もともと空だった容器に水を入れた場合には、「半分入っている」という表現が選ばれやすくなりました。もともと満杯だった容器から水を減らした場合には、「半分空いている」という表現が、前者の場合より選ばれやすくなりました。
別の参加者には、「半分入っている」または「半分空いている」という話し手の言葉から、容器が以前は空だったか、満杯だったかを推測してもらいました。「半分空いている」という言葉を読んだ場合には、以前は満杯だったと考える人が増えました。言葉の選び方には、現在の水位に加え、話し手がそこに至る変化をどう見ているかも表れていたのです。
仕事の報告にも、「七割終わりました」と「まだ三割残っています」という言い方があります。七割という数字から終えた作業を思い浮かべることもあれば、残る三割を聞いて、締め切りまでに何を進める必要があるか考えることもあります。報告を聞いた場面や、それまでの進み具合も、言葉を受け取るときの手がかりになります。
この節の出典:F7
関連語
プロスペクト理論/損失回避
出典
- F1 Levin, I. P., & Gaeth, G. J. (1988). How Consumers Are Affected by the Framing of Attribute Information Before and After Consuming the Product. Journal of Consumer Research, 15(3), 374–378. DOI: 10.1086/209174
- F2 Tversky, A., & Kahneman, D. (1981). The Framing of Decisions and the Psychology of Choice. Science, 211(4481), 453–458. DOI: 10.1126/science.7455683
- F3 Levin, I. P., Schneider, S. L., & Gaeth, G. J. (1998). All Frames Are Not Created Equal: A Typology and Critical Analysis of Framing Effects. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 76(2), 149–188. DOI: 10.1006/obhd.1998.2804
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- F8 Reyna, V. F., Brainerd, C. J., Chen, Z., & Bookbinder, S. H. (2021). Explaining risky choices with judgments: Framing, the zero effect, and the contextual relativity of gist. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 47(7), 1037–1053. DOI: 10.1037/xlm0001016