【工学化と抽象化 No.22】媒介化は、デジタル以前から始まっていた

Aug 18, 2026

工学化と抽象化シリーズ|第3部「媒介化とメタ化」第4回(全12回)

レビュー、検索、SNS、アルゴリズム。現代人が世界と直接関わりにくくなった原因を、デジタル技術だけに求めたくなることがあります。

しかし、人間ははるか以前から、言語、概念、数、物語、文字、貨幣を通して、目の前にない対象や、会ったことのない人と関係を結んできました。

媒介化はデジタル社会の発明ではありません。文明は、異なる媒介の層を積み重ねることで広がってきました。

デジタル化の新しさを理解するには、その前から続く長い変化の中へ置く必要があります。

文明は媒介を積み重ねてきた

媒介化の大きな見取り図は、次のように表せます。

身体と対面関係
→ 言語・概念・数による象徴的媒介
→ 文字・貨幣・法・宗教・政治制度による制度的媒介
→ 市場・官僚制・学問・科学による広域的媒介
→ 出版・新聞・放送によるマスメディア的媒介
→ プラットフォーム・データ・アルゴリズムによるデジタル媒介

これは、すべての地域が同じ順番で進んだという歴史年表ではありません。言語、貨幣、国家、科学、メディアの成立時期と関係は地域ごとに異なります。各論を配置するための見取り図です。

後の層が前の層を消したわけでもありません。私たちは今も対面で話し、物に触れ、言葉を使い、貨幣を払い、法律に従い、科学や報道を参照しています。

文明の発展は、古い媒介が新しい媒介へ置き換わる過程というより、異なる媒介が蓄積し、接続され、互いを参照するようになる過程として捉えられます。

媒介は人間関係を遠くまで広げた

媒介には大きな利点があります。

文字があれば、知識を話し手の不在後にも残せます。貨幣があれば、直接知り合わない人とも交換できます。法や共通規格があれば、広い範囲で協力できます。科学的知識や報道によって、自分では直接確かめられない出来事も共有できます。

オングは、話し言葉から書き言葉への移行が、記憶、論述、思考の組み立て方を変えたと論じました。書かれた言葉は話し手から離れて残り、繰り返し参照され、批判の対象になります。[1]

一方、媒介が重なるほど、行為と結果、生産者と消費者、判断と根拠の距離も広がります。私たちは現物ではなく記録を見て、本人ではなく評価を参照し、個別事情ではなく分類を通して判断するようになります。

媒介は協力可能性を広げると同時に、現実との接触を、別の誰かが作った圧縮へ置き換える可能性を持ちます。

媒介だけを原因にしてはいけない

ただし、「文字やデジタル技術が人間の認識を変えた」とだけ述べるのは単純すぎます。

ストリートは、識字をそれ自体で一定の認知効果を生む中立的な技術として扱う「自律モデル」を批判しました。同じ読み書きでも、宗教、商業、学校では異なる実践であり、社会関係から切り離して効果を語れないという指摘です。[2]

本稿もこの批判を採用します。媒介の形式だけで結果が決まるのではありません。その媒介が、どの制度の下で、誰によって、何の目的に使われるかによって、見えるものと見えなくなるものが変わります。

プラットフォームも同じです。技術そのものを善悪の原因にするのではなく、可視性や利益をどのように配分する制度として運用されているかを問う必要があります。

現代では対象より先に情報へ触れる

商品を買う場面を考えてみます。

過去にも、口伝えの評判、商人の説明、流行、共同体での見られ方がありました。以前の消費が無媒介だったわけではありません。

現在は、SNSで商品を知り、検索し、レビューを読み、比較動画を見て、ブランドの思想や他人が使う様子を確認してから購入します。購入後の投稿は、次の人の判断材料になります。

違いは媒介の有無ではなく、参照できる他者の解釈の量、速度、可視性、相互接続性にあります。

媒介化研究では、メディアを情報の通り道だけでなく、社会的現実が構成される過程に関わるものとして捉えます。コールドリーとヘップは、デジタルメディア、プラットフォーム、データ過程を通して日常的な社会世界が媒介的に構成されると論じています。クロッツも、媒介化を長期的な社会変容のメタプロセスとして捉える枠組みを提示しています。[3] [4]

層が増えるだけでなく戻り道が生まれた

デジタル環境では、映画から感想、レビュー、考察、反論、ミーム、二次創作へと媒介層が重なります。さらに、そこで生まれた解釈を作者や企業が取り込み、次の作品や表現へ反映することがあります。

層が増えることが重層化であり、下流の解釈が上流へ戻ることが再帰化です。

ただし、「媒介層が増えた」という主張は、現段階では検証仮説です。購買前に参照する情報源の数、作品公開から二次創作までの時間、作者や企業へのフィードバック回数など、観察可能な指標へ分けて確かめる必要があります。

次の記事では、この重層化が仕事と消費の中でどのように現れ、考察や批評への参加をどう変えたのかを見ます。

この記事の要点

  • 媒介化はデジタル以前から、言語、文字、貨幣、制度などを通じて進んできました。
  • 文明は、古い媒介を消すのではなく、異なる媒介層を蓄積し接続してきました。
  • 媒介は広域的な協力を可能にする一方、現実との距離を広げることがあります。
  • 媒介の形式だけでなく、それが使われる制度と社会関係を見る必要があります。
  • 現代的な特徴は、媒介の重層化と再帰化が同時に進んだことにあります。

参考文献

  1. Ong, W. J. (1982). Orality and Literacy: The Technologizing of the Word. Methuen(現行版 Routledge, 2012). https://www.routledge.com/Orality-and-Literacy-30th-Anniversary-Edition/Ong/p/book/9780415538381

  2. Street, B. V. (1984). Literacy in Theory and Practice. Cambridge University Press. https://www.cambridge.org/9780521289610

  3. Couldry, N., & Hepp, A. (2016). The Mediated Construction of Reality. Polity. https://www.wiley-vch.de/en/areas-interest/humanities-social-sciences/the-mediated-construction-of-reality-978-0-7456-8131-3

  4. Krotz, F. (2007). “The Meta-Process of ‘Mediatization’ as a Conceptual Frame.” Global Media and Communication, 3(3), 256–260. https://doi.org/10.1177/17427665070030030103

次の記事:仕事と消費は、なぜ意味や評価を扱うようになったのか

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