「賢い体」は、無意識の自動調整を生かし、動きの細部を意識で管理し続けなくても、その場に合う動作ができる体を表すJINENの言葉です。「身体知」とも呼びます。意識の負担を減らしながら、必要なところが協調して働く体を目指します。
画像を拡大意識で補う動きと、自動調整を生かす動き
自動的な力加減や各部の協調がうまく働かないと、「肩を下げて、肘はこの角度で、指に力を入れて」と、意識的な操作で補おうとすることがあります。管理する項目が増えるほど、動作の細部を考え続けなければなりません。この考える負担が、ここでいう認知負荷です。自動調整を生かせれば、細かな動きを体に任せ、目的や周囲の状況にも注意を向けやすくなります。
自動調整では、脳を含む神経系が今の感覚と経験を使い、必要な力や動きを見越します。動いたときに返る感覚で修正しながら、筋肉が働く強さとタイミングを組み合わせます。たとえば、いつものカップなら、以前の重さから力を準備し、実際の重さや滑りに応じて、握る力と持ち上げる力を調整する。こうした予測と修正が、細かな指示を出さずに動けることを支えます。手の力加減と感覚の研究(1984)・重さの予測と修正の研究(1988)
確かめてから任せる
自動調整の働きも、経験や学習によって変わります。慣れた力みや癖が出ることもあるため、体に任せてどう動いたかに気づくことが大切です。いつも肩をすくめるなら、その部分を小さな動きで確かめ、分かったことを全体の動作へ戻します。こうした行き来を通して、状況に合う調整を学びます。
「自律の動き」は、意識で目的や方向を選び、細かな動きを体の自動調整に任せることです。動いた感覚や結果を確かめ、必要な部分は丁寧に学び直します。意識を使って学び、その成果を少ない負担で生かせるようにする。細部の管理に追われず、目的へ向かって動ける体を育てるのがねらいです。