自律神経

Oct 18, 2026

じりつしんけい|Autonomic nervous system|自律神経・呼吸

階段を上ったあと、胸の拍動が速くなり、少し汗ばんでいることがあります。椅子に座って休むうちに、拍動の速さも変わっていきます。階段を上る間には、脚を動かす働きとともに、心拍や発汗の調節も進んでいます。 AN-S2

こうした内臓や腺の働きを調節する神経系を「自律神経系」と呼びます。日常では「自律神経」と略されます。心臓、血管、消化管、汗腺などに神経が届き、活動や休息に合わせて身体の内部の状態を保っています。 AN-S1 AN-S7

食後には消化管が食べ物を送り、暑いときには汗腺が汗を出します。これらを一つひとつ意識して操作しなくても、器官の状態に応じた調節は続きます。 AN-S1 AN-S3

自律神経の入口図。自律神経は意識して操作しなくても内臓や腺を調節する神経系と説明。暑い日に汗をかく成人と、皮膚上の汗が蒸発する概念図を大きく描く。交感神経の信号が汗腺へ届き、汗の分泌を促すと文章で結び、心拍や消化管の動きにも関わると補足する。
自律神経は、内臓や腺の働きを身体の状態に応じて調節する。暑いときに交感神経の信号が汗腺へ届き、汗の分泌を促す場面を例に示す。汗が蒸発すると、身体の熱が逃げる。

心臓や血管へ届く神経の道筋

心臓の壁には、血液を押し出す心筋があります。心臓の中でリズムを作る細胞が電気信号を生み出し、それが心筋へ広がると拍動が起こります。自律神経は、そのリズムや収縮する力を調節します。血管や消化管の壁にある平滑筋も、自律神経の信号を受け取ります。平滑筋が収縮すると管の太さが変わり、消化管では内容物を混ぜたり移動させたりします。汗腺や唾液腺には、汗や唾液の分泌を調節する信号が届きます。 AN-S7 AN-S10

脳や脊髄から器官へ向かう経路は、多くの場合、二つの神経細胞を介しています。最初の神経細胞は、脳や脊髄から長い突起を伸ばします。途中の「自律神経節」で次の神経細胞へ信号が渡り、そこから器官に届きます。神経節とは、神経細胞の中心部にあたる細胞体が集まっている場所です。 AN-S1 AN-S7

神経から標的の細胞へ信号を伝えるときには、神経伝達物質が放出されます。アセチルコリンやノルアドレナリンは、その代表です。伝達物質を受け取る細胞側にも、物質に反応する受容体があります。このやり取りを通して、心拍の速さ、血管の太さ、分泌の量などが変わります。 AN-S7

交感神経と副交感神経の働き

自律神経の主要な区分が、交感神経系と副交感神経系です。どちらも脳や脊髄と器官を結び、日々の身体活動を支えています。交感神経の指令は主に胸部と上部腰部の脊髄から、副交感神経の指令は脳幹と仙髄から出ます。脳幹は脳と脊髄をつなぐ部分、仙髄は脊髄の下方にある部分です。 AN-S7

心臓では、交感神経の働きが増すと、拍動が速まり、収縮する力も強まる方向へ調節されます。副交感神経は、拍動の速さを下げる方向に働きます。運動を始めたときや休んでいるときには、心臓へ届く両者の活動が変わり、その場面に合う血液の送り方につながります。 AN-S2 AN-S3

副交感神経を通る信号は、唾液腺では唾液の分泌を促し、消化管では食べ物を送る運動を促します。明るい場所で瞳孔が小さくなる反応にも、副交感神経の経路が使われます。瞳孔は眼の中央にある光の通り道です。その周りを輪の形に囲む筋肉が縮むと、瞳孔が小さくなって眼に入る光の量が減ります。 AN-S3 AN-S7

器官ごとに神経のつながり方も異なります。汗腺の分泌は主に交感神経が調節します。多くの血管も交感神経の支配を受け、休んでいる間にも続く神経活動が、血管の壁の筋肉をある程度収縮させています。 AN-S2 AN-S3

暑い部屋で座っているだけでも、汗をかくことがあります。汗腺へ届く交感神経の信号が増えると、汗の分泌が促されます。汗が皮膚の表面から蒸発するときに熱が奪われ、体温の上昇を抑えます。運動時に汗をかくのも、筋肉の活動で生じた熱を逃がす働きの一つです。 AN-S7 AN-S11

身体の変化を受け取って調節する

器官を調節するためには、そこで何が起きているかという情報も必要です。血管の壁の伸び、消化管の内容物による広がりなどの情報は、感覚神経を通して脳や脊髄へ届きます。内臓から届く情報は、自分で一つずつ意識していない間にも神経回路で使われています。 AN-S4

脳の中では、視床下部や脳幹が自律神経の調節に重要な役割を持ちます。視床下部は脳の奥にある領域です。脳幹には、心臓や血管などの働きを調節する回路があります。身体から届く情報や、脳内のほかの領域からの情報を受けて、器官へ向かう信号を変えています。 AN-S5

人前で話す直前に心拍が速くなったり、恥ずかしいと感じて顔が赤くなったりすることもあります。自律神経の調節には、身体の内部の状態に加えて、周囲の状況をどう受け取ったかという脳の働きも関係しています。こうしたつながりが、感情と身体の変化を結び付けています。 AN-S5

立ち上がるときの血圧を支える

椅子から立つという短い動作でも、身体の内部には変化が起こります。身体が起きると、重力の影響で脚などの静脈に血液がたまりやすくなり、心臓へ戻る血液が一時的に減ります。この変化は、心臓から送り出す血液の量や血圧にも影響します。 AN-S6

首を通る頸動脈の一部(頸動脈洞)や、心臓から出た大動脈が弓状に曲がる部分(大動脈弓)には、血管の伸びを捉える圧受容器があります。血圧の変化に伴って壁の伸びが変わると、その情報が脳幹へ届きます。血圧が下がると、心臓や血管へ向かう交感神経の活動が増し、心臓への副交感神経の活動が減る方向へ調節されます。 AN-S6 AN-S8

その結果、心拍が速まり、心臓の収縮が強まり、血管が収縮することで、血圧の低下を抑えます。この一連の働きが、圧受容器反射です。立ち上がって目の前の用事へ向かう間にも、身体の位置の変化を受けた調節が進んでいます。 AN-S6 AN-S8

消化管の壁にも神経が広がる

食事をすると、消化管では食べ物を混ぜ、先へ送り、消化液などを分泌する働きが進みます。消化管の壁には、腸管神経系と呼ばれる神経細胞の集まりがあります。 AN-S1 AN-R1

腸管神経系には、消化管の状態を受け取る神経細胞、それをほかの細胞へ伝える神経細胞、筋肉や分泌を調節する神経細胞がつながっています。小腸や大腸では、内容物による壁の伸びなどが神経回路に伝わり、近くの筋肉の収縮や分泌が調節されます。内容物を混ぜたり、先へ移動させたりする働きに、この局所の回路が関わっています。 AN-R1

消化管の神経は、迷走神経などを通して脳や脊髄とも情報をやり取りします。迷走神経は脳幹から胸部や腹部の器官へ伸び、内臓からの感覚情報や副交感神経の指令を伝える神経です。食後の消化は、消化管の壁の回路と、脳や脊髄につながる経路が関わり合いながら進みます。 AN-S3 AN-R1

呼吸とともに変わる心拍

座って静かにしているときにも、心拍と心拍の間隔には小さな変動があります。呼吸の周期に伴う変動は「呼吸性洞性不整脈」と呼ばれます。一般に、息を吸う間に心拍が速くなり、吐く間に遅くなる傾向があります。呼吸と心臓の調節が結び付いて生じる、生理的な変化です。 AN-S9

HirschとBishopが1981年に発表した研究では、座った姿勢の17人に、呼吸の速さと一度に吸う息の量を変えてもらい、心拍の変動を調べました。呼吸に伴う心拍変動の大きさは、呼吸の速さと量に応じて変わりました。 AN-P1

歩いたあとに腰を下ろすと、胸やお腹の動きとともに拍動を感じることがあります。身体を動かしていない間も、心臓へ届く神経の活動は続き、呼吸や血圧の変化に合わせて拍動が調節されています。 AN-S3 AN-S6 AN-S9

関連語

交感神経、副交感神経、迷走神経、内受容感覚、恒常性

出典

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