きゅうしんせいせんい|afferent fiber|感覚・運動制御
靴を履いたとき、靴下の縫い目が足指に当たっていることに気づきます。少し足を動かしてみると、当たる場所が変わります。こんな身近な経験のあいだにも、足から脊髄や脳へ情報が伝わっています。求心性線維は、身体の末梢から中枢神経系へ、感覚に関わる信号を伝える神経線維です。中枢神経系とは、脳と脊髄のことです。触れた場所、手足の動き、身体内部の状態などの情報を届け、知覚や身体の調節を支えています。
神経線維は、神経細胞の細長い部分
神経細胞はニューロンとも呼ばれ、細胞の本体である細胞体から、細い突起が伸びています。信号を離れた場所へ伝える突起を軸索と呼びます。神経線維という言葉は、この軸索と、それを包む構造を指して使われます。
たとえば、足の皮膚で生じた感覚信号を脊髄へ運ぶ細胞は、足から背骨の近くまで長い突起を伸ばしています。その突起の膜では、活動電位という短い電気的な変化が次々に起こり、信号が伝わります。
腕や脚を通る末梢神経は、多くの神経線維が集まった束です。同じ束の中に、皮膚からの信号を伝える線維や、筋肉からの信号を伝える線維、筋肉を動かすための線維などが含まれます。それぞれが決まった細胞や領域につながっています。
求心性と遠心性は、情報が向かう方向
足から届く感覚の信号を、身体の末梢から中枢へたどると、求心性の向きになります。中枢から筋肉などへ向かう線維は、遠心性線維と呼ばれます。どちらの言葉も、情報がどこへ向かうかを表しています。
靴下の当たり方に気づいたあと、足指を動かす場面では、脊髄の運動ニューロンから筋肉へ信号が伝わります。筋肉が収縮して指の位置が変わると、刺激を受け取る皮膚や筋肉の受容器がその変化に反応し、求心性線維に新しい信号が生じます。こうした入力を受けながら、足指の位置を調節しています。
脳の内部の回路についても、ある領域へ入ってくる線維を、その領域への求心性線維と呼ぶことがあります。身体と脳・脊髄の関係を説明するときは、身体から中枢へ入る向きが基本になります。
どんな情報を伝えるのか
皮膚には、接触や圧、振動、温度などに反応する受容器があります。筋肉や腱、関節の周囲からは、身体の位置や動き、力に関わる情報が届きます。こうした情報を伝える求心性線維が、触覚や固有感覚などのもとになります。
強い圧、熱、組織の化学的な変化など、身体を傷つける可能性のある刺激に反応する線維もあります。このような刺激を受け取る受容器は、侵害受容器と呼ばれます。そこからの信号は、脊髄や脳での処理を経て、痛みの経験や身体を守る反応に関わります。
身体の内部からも、心臓や血管、肺、消化管などの状態を伝える信号が届いています。内臓からの求心性情報には、脳の下部にある脳幹と内臓をつなぐ迷走神経を通るものや、脊髄へ入るものがあります。血圧や消化などの調節には、こうした身体の内部からの情報が使われています。
見ることや聞くことにも、感覚器側から脳へ情報を伝える求心路があります。目の奥にある網膜で処理された視覚の信号は視神経を通り、耳の内部で受け取られた音の信号は聴覚の経路を通って脳へ伝わります。感覚の種類によって、入口となる器官と中枢へ至る経路が異なります。
この節の出典:A_S4、A_S6、A_S8、A_S2、A_S9、A_S10、A_S11
身体から脊髄へ入り、その先へ
手足や体幹からの多くの感覚神経では、細胞体が脊髄のすぐ外側に集まっています。この集まりを後根神経節と呼びます。細胞体から出た突起は二つに分かれ、一方は皮膚や筋肉などへ、もう一方は脊髄へ伸びています。末梢の受容器で生じた信号は、このつながりを通って脊髄へ入ります。
脊髄に入った線維は枝分かれし、脊髄内の回路や脳へ情報を送ります。神経細胞から次の細胞へ情報を渡す接点がシナプスです。触れた場所や手足の位置の情報は、代表的な経路では、脳幹で次の細胞へ渡されます。さらに脳の奥の視床を経て、大脳表面の大脳皮質へ届きます。
こうした複数の神経細胞のつながりが、中枢へ情報を運ぶ求心路を作っています。
線維によって伝わる速さが違う
軸索には、髄鞘と呼ばれる層状の膜に包まれたものがあります。末梢神経では、シュワン細胞という細胞が軸索の周囲に巻きつき、この膜を作ります。髄鞘は電気の漏れを小さくし、信号が速く伝わることに役立ちます。
軸索が太いことも、速い伝達につながります。筋肉の長さや変化を伝える線維には、太く髄鞘を持つものがあります。髄鞘のある線維を有髄線維、ない線維を無髄線維と呼びます。細い無髄線維では、信号はよりゆっくり伝わります。
太さや伝導速度に基づく分類に、Aβ線維やC線維という名前があります。皮膚の接触を伝える有髄線維の多くはAβ線維、細い無髄線維はC線維に含まれます。筋肉などからの感覚線維にはIa群・II群といった分類も使われ、筋肉の長さを捉える筋紡錘からは、Ia群とII群の線維が出ています。
一本の線維と、感じる場所の関係
求心性線維の働きは、人の末梢神経へ細い電極を入れ、信号を記録する微小神経電図という方法でも調べられています。どの皮膚の場所へ触れると、その線維が反応するのかを確かめられます。この反応する範囲を、受容野と呼びます。
ワトキンスらは、手首近くの正中神経から、手の皮膚を押したり伸ばしたりしたときの信号を記録しました。注目したのは、押し続けても反応を保ち、皮膚を横へ引っ張る刺激にも敏感なSAII(遅順応II型)という種類の線維です。同じ電極から弱い電気刺激を加え、刺激によって感じる場所と受容野が対応することを確かめました。
こうして対応を確認できた12人分の18本を詳しく調べると、手の皮膚の限られた範囲が穏やかに押されるような感覚が報告されました。
手の皮膚を直接押していないのに、本人は手の決まった場所に圧を感じています。どの線維が活動し、その線維がどこにつながるかが、感じる場所や感覚の種類に関わっています。
この節の出典:A_P1
動きを続けるための感覚入力
求心性の情報は、いま何を感じているかに加え、動きを続けるためにも使われます。紙袋の持ち手を握り、歩き出すと、荷物の揺れに合わせて手の皮膚や筋肉にかかる力が変わります。その変化についての入力が、握る力や腕の動きの調節に関わります。
ロスウェルらは、重い末梢感覚神経障害のある男性1人の手の動きを詳しく調べました。筋力はほぼ保たれ、目を閉じても、あらかじめ決めた指の動きをかなり正確にできました。日常生活では、ペンを持って書くことや、服のボタンを留めることに大きな困難がありました。目で確認できないと、一定の力を出し続けることや、単純な動作を長く繰り返すことも難しくなっていました。
求心性の入力は、動きの結果を神経系へ伝え、進行中の作業を調節する手がかりになります。
意識される感覚と、身体の調節
身体からの情報には、脊髄の回路で反射に使われるものもあります。脊髄では、筋肉の伸びを捉える筋紡錘の信号が、その筋肉を収縮させる運動ニューロンへ伝わる回路があります。この回路による伸張反射は、その一例です。内臓から届く情報も、本人がその変化を意識していない間に、自律神経の調節へ使われています。
ボディワークで静かに立っているときにも、足裏や筋肉から信号が届きます。そこへ注意を向けると、圧の場所や身体の揺れに気づくことがあります。注意を別のことへ向けている間も、身体からの入力は、姿勢や動きを支える神経回路へ伝わっています。
関連語
- 求心路:中枢へ情報が伝わる神経の経路。
- 遠心性線維:中枢から筋肉などへ向かう神経線維。
- 固有感覚:身体の位置・動き・力に関わる感覚。
- 機械受容器:力による変化を受け取る感覚受容器。
- 伸張反射:筋肉の伸びへの反射。
参考文献
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