こり・痛み・姿勢の歪み・動きのぎこちなさが、なかなか変わらない。このような悩みをおもちの方は、体と脳のつながりという視点を知っておくと解決につながります。
- こり・痛み・姿勢の歪み・動きのぎこちなさに共通する「体と脳のつながりの弱さ」というメカニズム
- まず各関節を「わけて」動かし、ボディマップをクリアにすること(股関節・背骨・肩甲骨)
- 分けた体を「つなげる」連動と、動的瞑想としての効果
- 「力をもらう」=反力を活かして下から上へ力を伝えるという考え方
おさらい:悩み別に「どこを重点にするか」
①→②→③は基本の順番ですが、悩みによって重点が変わります。
ここで整理しておきます。
心身の不調系
緊張や不安が強い/動揺しやすい・繊細・刺激に過敏/メンタル面の不調/自律神経の乱れ(睡眠・汗など)
→ ①と②の段階が大事です。
身体的な不調・悩み系
首・肩・背中などのこり、張り、固さ/関節の痛みの予防・改善/姿勢や体のバランスの歪み/日常動作を楽にする/スポーツ・ダンス・武道などの動きの向上
→ ③が大事です。
ここでお話しする③体の使い方を変えるは、とくにこの身体的な不調・悩み系の土台になる内容です。
そこで、まずはこうした悩みの「メカニズム」から入っていきます。
こり・痛み・歪み・ぎこちなさに共通するもの
こり、痛み、姿勢の歪み、動きのぎこちなさ。
一見ばらばらの悩みに見えますが、じつは共通した背景があります。
それは、体と脳のつながりが弱くなっているということです。
私たちの体は、いつも次のようなやりとりで動いています。
- 体から脳へ、いまの状態を伝える(感覚入力)
- 脳から体へ、「こう動こう」という指令や予測を送る(出力・予測)
- その予測と実際のズレを、たえず微調整しつづける
この感覚 → 指令 → 微調整の連続が、なめらかに働いているとき、体は楽に、無理なく動きます。
ところが、このやりとりが弱くなると、脳がもっている体の地図(ボディマップ)がぼやけてきます。
すると、どこに力が入っているかもわからないまま、余計な緊張が抜けず、動きがぎこちなくなります。
そして特定の場所にばかり負担がかかり、こりや痛み、歪みとして表れてきます。
では、この体と脳のつながりを取り戻すには、どうすればいいのか。
その基本が、ゆっくり体を動かすことです。
速い動きでは、感覚を感じ取り、ズレを微調整する余裕がありません。
ゆっくり動くからこそ、感覚と脳のやりとりが細やかに働き、つながりが育っていきます。
まず「わける」― 関節を1つずつ動かし、ボディマップをクリアに

体の使い方を変える最初の一歩は、各関節を正しく使えるようになることです。
そのためにやるのが、関節を1つ1つ「わけて」動かすワークです。
ふだんまとめて動かしている関節を、ていねいに切り分けて動かす。
それだけで、脳内のボディマップが少しずつクリアになっていきます。
とくに大切なのが、次の3つの部位です。
股関節
…… はめる・引き込むこと。脚のつけ根をしっかり格納して使えること。
背骨
…… 1本ずつ動かせること。ひとかたまりの棒ではなく、連なった節として動かせること。
肩甲骨
…… 肋骨と独立して大きく動かせ、かつ安定もできること。
この3つは、あらゆる動きの中心にある部位です。
歩く、立つ、腕を使う、体をひねる。
どの動作をとっても、股関節・背骨・肩甲骨のどれかが土台になっています。だからこそ、まずはこの3つの動きが整うことが、なにより大切になります。
ここが整うだけで、体全体の動きが大きく変わってきます。
次に「つなげる」― 分けた体を連動させる
関節を分けて動かせるようになったら、次はそれを「つなげる」番です。
バラバラに動かせるようになった各部位を、なめらかにつないで連動させていきます。
連動の基本は、下から上への流れです。
股関節 → 背骨(下から上へ)→ 胸骨・肩甲骨 → 腕、もしくは頭へ
このとき大切なのが、自分の力で無理に動かそうとしないことです。
下からの流れに「ゆだねる」ことで、体が自然に動かされていく。
その感覚を探してみてください。「自分で動かす」から「動かされる」へ。
この切り替えができると、動きから余計な力みが抜け、なめらかな連動が生まれてきます。
「ゆだねる」は、心にも効く ― 動的瞑想としての効果
ゆっくり動きながら、体の感覚や、外からもらう力に意識を向けて「ゆだねる」。
じつはこれには、動的瞑想のような効果があります。
動きに意識を向けることで集中力が高まり、頭の中の自動思考が止まり、思考優位から身体感覚優位へと切り替わっていきます。
これが、心の落ち着きにもつながっていきます。
体を整える③のワークが、そのまま①②(自律神経・感覚)にも効いてくる、というわけです。
「力をもらう」― 反力を活かし、妨げない
最後のキーワードが、「力をもらう」ことです。
力をもらうとは、端的にいえば、反力による連動を活かすこと、そして妨げないことです。
地面や壁、イスの座面。
体はつねに、どこかから返ってくる力(反力)を受け取っています。じつは、どのようなワークも、この反力をもらって動いています。
自分の筋肉だけで動かしているように見えて、その土台には、いつも下からの反力があります。
だからこそ、力んで体を固めてしまうと、この反力の流れをせき止めてしまいます。
逆に、余計な力を抜いて反力にゆだねると、下から上へと力が自然に伝わり、少ない力でなめらかに動けるようになります。
最初は、この「もらう」感覚がうまくつかめないかもしれません。
それでも大丈夫です。
繰り返し感じようとすること、それ自体が大切です。
うまくできなくても、感じようとするだけで、脳や神経の働きは変わっていきます。
反力をもらい、体の下から上へと力を伝える。
その意識をもって動くことが、③の核心です。
実践ワーク:「わける」と「つなげる」を体感する
では、③を体感するためのワークを2つ紹介します。
「わける」入口と、「つなげる」入口の2本です。
もも裏刺激とヒップヒンジ(おじぎ)
3つの部位のうち、まず股関節をはめる・引き込む感覚を育てるワークです。
股関節を支点に上体を前へ倒し、もも裏と尻で体を支えます。
腰や背中を丸めて動かすのではなく、脚のつけ根から折りたたむ感覚を探してみてください。
四つ這いでの背骨ウェーブ
こちらは連動を体感するワークです。
四つ這いで地面からの反力をもらいながら、骨盤から背骨へと1本ずつ波(ウェーブ)を通していきます。
自分から動かすのではなく、下からの力にゆだねて「動かされる」感覚を探してみてください。
今回お伝えした「わける・つなげる・ゆだねる・力をもらう」が、ひとつの動きの中に詰まっています。
深めるためのポイント
- とにかくゆっくり。感覚と脳のやりとりが働く速さで
- 背骨の1つ1つ、部位の1つ1つを感じ分ける
- 自分で動かさず、下からの反力にゆだねる
- うまくできない日でも、感じようとするだけで十分
3ステップのまとめ
これで、3つのステップがすべて出そろいました。
① 自律神経の働きを整える(呼吸法など)
② 感覚の働きを整える(前庭覚・体性感覚・内受容感覚)
③ 体の使い方を変える(わける・つなげる・ゆだねる・力をもらう)← 今回
大切なのは、この順番の意味です。
まず神経系(①②)を整え、体と脳のつながりという土台をつくる。
そのうえで、体の使い方(③)を変えていく。
この順で進むからこそ、無理なく、根っこから変わっていきます。そして今回見てきたように、③のワークは、じつは①②にもはたらきかけます。
3つのステップは切り離されたものではなく、たがいに支え合う一つの流れなのです。