体の内側を感じる呼吸法

Nov 03, 2026

呼吸が浅い、肩や首がこりやすい、リラックスしようとしても体が休まらない。このような悩みをおもちの方は、呼吸法を知っておくと解決につながります。

呼吸法は、自律神経を整えるための入口として、もっとも基本的かつ効果的な方法です。

9割の方が、呼吸がうまくできていない

ボディワークの指導をしていて、実感していることがあります。

体の使い方やリラックスを指導する前に、まず呼吸を確認すると、9割がたの方がうまく呼吸できていません。

具体的には、こういう傾向がみられます。

  • 横隔膜がほとんど動いていない(胸や肩だけで呼吸している)
  • 肋骨が横に広がってしまう(横隔膜で吸うのではなく、肋骨を張り出して吸っている)
  • 胸椎・肋骨が動きにくくかたい

そしてとくに多いのが、普段から横隔膜があまり使えていないために、呼吸補助筋である首まわりの筋肉(胸鎖乳突筋・斜角筋など)が常に使われている状態です。

これが、肩こりや首こりの原因のひとつになっています。

また、呼吸が浅いままでいると、浅い胸式呼吸によって交感神経が優位な状態が続き、体が回復しない・リラックスできない、という悪循環に入りやすくなります。

心当たりのある方も多いのではないでしょうか。


呼吸法の2ステップ

呼吸法の2ステップ:①正しい腹式呼吸を身につけ、②体の内側をイメージしながら呼吸する

呼吸法には、やり方をひとつ覚えればいい、というものではありません。

私がとくに大切にしているのは、次の2つのステップです。

① まず、正しく呼吸できるようになること

横隔膜を使った腹式呼吸を身につける段階。

② 体の内側をイメージしながらやること

内側の空気の流れを感じようとしながら呼吸する段階。

①だけでも効果は十分にありますが、②を加えることで、自律神経への働きかけが格段に深まります。

順に説明します。


① 腹式呼吸のやり方

腹式呼吸のポイントを整理します。

腹式呼吸のチェックポイント

  • 肋骨の下部が四方に動く(前後左右)
  • お腹と背中に空気が入って動く(下腹部から背中側まで)
  • 骨盤底筋が動く(吸うと尻がゆるみ、吐くと少し締まる感覚)
  • 肋骨が横に広がったり上下したりしない
  • 首まわりがリラックスしたまま

横隔膜はドーム状の呼吸の主役筋です。

腹式呼吸で横隔膜が大きく上下すると、腹腔内の内臓が動かされ、体の中心(下っ腹の奥)に感覚が目覚めてきます。

また、息を長く吐くと、迷走神経が心拍にブレーキをかけるリラックス反応(RSA:呼吸性洞性不整脈)が働き、リラックスが深まります。

横隔膜まわりは迷走神経が豊富に分布しているため、深い呼吸はここを通じて脳へ「安全ですよ」という信号を届けます。

みぞおちや首肩が力むと横隔膜の動きが制限されてしまうため、上半身をゆるめながら行うことが大切です。


② 体の内側をイメージしながらやる

次のステップは、呼吸とともに体の内側を感じようとすることです。

これが、内受容感覚を高めることにつながります。

内受容感覚とは、心拍・呼吸・内臓の動き・体内の温度など、体の内側の状態を感じ取るセンサーのことです。

内受容感覚が豊かだと、自分の状態を正確に感じ取れるようになり、周囲の刺激やストレスに左右されにくくなります。

「私は私」という自己所有感(自分の体が自分のものだという実感)が強まることで、安心感の土台ができます。

また、体の内側に意識を向けることは、頭の中の自動思考(グルグルとした思考の連鎖)を鎮め、神経を落ち着かせる効果があります。

感じられなくても、感じようとするだけで十分です。

意識を向けること自体が、内受容感覚を育てます。

具体的なイメージとしては、次のようにやってみてください。

イメージ① 体幹の空洞に息を満たす

体幹の中が大きな空洞になっているイメージ。

吸うと、空気がその空洞全体をゆっくり満たしていく。

吐くと、空洞全体から空気がすっと抜けていく。

イメージ② 背中側を風が通る

吸うとき、空気が背中側を触れながら下腹あたりまで届いていくイメージ。

吐くとき、その空気が背中側を通ってゆっくり鼻から抜けていく。

風が体の奥をそっと通り抜けるような感覚で。

どちらも鼻呼吸で行います。

舌を上あごに全体的につけたまま呼吸すると、鼻呼吸が安定しやすくなります。


注意:内側への集中で緊張する場合

ひとつ注意点があります。

内側に意識を向けると、かえって緊張したり、息苦しく感じる方がいます。

これは①の腹式呼吸がまだ身についていない段階でよく起こります。

その場合は、②は後回しにして、まず①の腹式呼吸を自然にできるようにすることに集中してください。

①が安定してくると、②の内側へのイメージも自然と深まっていきます。


日常への取り入れ方

呼吸法は、毎日ちゃんとやろうとしなくていいです。

大切なのは、ときどき思い出して、身体感覚に注意を向ける時間をつくることです。

寝る前、仕事の合間、少し疲れを感じたとき。そういう場面で5分ほどやるだけで、体の回復のしやすさが変わってきます。

呼吸が整ってくると、回復しやすく、疲れがとれやすく、集中しやすい、落ち着いた状態になっていきます。

ひとつだけ付け加えると、ボディワーク(他の動きのワーク)をするときは、呼吸への意識はほとんど不要です。

動きながら呼吸に集中しすぎると、かえって動作の質が下がります。

呼吸法は「呼吸に集中する時間」として独立させて行い、それ以外のときは自然に任せておく。その使い分けが、呼吸を無理なく習慣にしていくコツです。

呼吸は地味に見えますが、体の状態を根っこから変えていく、もっとも確実な方法のひとつだと思っています。

まずは①の腹式呼吸を、一度ゆっくり試してみてください。

START YOUR JOURNEY

目的に合わせて選べる2つの道

🌿 ご自身のケアに

週替わりのワーク動画で、心身を整える。
セルフケアを習慣化したい方へ。

オンライン教室(一般)
🎓 指導・探求のために

脳神経系と骨格構造を論理的に学ぶ。
指導者を目指す方のための認定講座。

インストラクター養成
Follow me
情報発信に力を入れています。