過緊張や体の動かしにくさに悩む方は、筋肉ではなく神経の働きと、体の軸の動かし方を知っておくと、解決につながります。
発信テーマについて
私の発信の目的は、古武道・整体・科学的理論をもとに、よりよい方法や知識を広め、心身のことで悩む方にヒントをお届けすることです。
とくに緊張とリラックス、楽な体の使い方、運動能力の基盤を整えることなどが私の強みですので、これからしばらくはこれらを掘り下げて解説していきます。
そこでまずは、多くの方が悩んでいる体や心の緊張と運動能力がどう関係しているのかから解説し、それから具体的な対処法のヒントをお伝えします。
過緊張と運動能力の、意外な共通点
過緊張を緩めることと、運動能力の土台を維持・発展させることは、多くの部分で重なります。それは、どちらも
「体を反射的な制御から、意識によるコントロールへと置き換えていくこと」
「無意識下のコントロールの働きも、感覚や神経の働きから向上させること」
だといえるからです。
つまり、反射的コントロールを意識的なコントロールへ置き換える、という側面と、それらのベースにあるより根源的な無意識下のコントロール自体を向上させること。この2つが大切なのです。
知っておくべきこと① 筋肉について
まだまだ世の中では、緊張についても運動能力についても、筋肉の問題であると考えられていることが多いです。
確かに筋肉は大事なのですが、全身の筋肉から情報を集めたり、筋肉を動かす指令を出しているのは脳・神経系です。
そのため、どれだけマッサージやストレッチで筋肉をゆるめようとしても、脳・神経系の側が「緊張せよ」と指令を出し続けているかぎり、体は緊張した状態に戻っていきます。筋肉ではなく、その上流にある神経の働きを変えていくことが、根本的なアプローチになります。
知っておくべきこと② 部分から全体へ
もう1つ大切なのが、体は全身から捉えてケアやトレーニングをしていくべきだということです。
ヨガ、ピラティス、筋トレをしてきた方の中には、解剖学的な細かい筋肉の知識が豊富な一方で、自分の体も筋肉という部品の寄せ集めのようにイメージしている方が少なくありません。
指導をしていると「〇〇筋が弱いのでしょうか」「それは〇〇筋を動かすことですか?」といった質問が来ることも多いのですが、そもそも人の体はそれほど細かく動かせませんし、動かす必要もありません。
「わけて動かす」は「つなげて動かす」の前提と考えておかないと、過剰な部位コントロールの意識が代償運動(見た目は似ていても間違った動き方)につながり、力みやすい癖、傷めやすい癖を強めることになります。
これは運動指導者・トレーナーも間違って指導しているケースが多いようですので、生徒側の方も気をつけておくべき点です。
あらゆる動きは全身運動であり、全身のつながり、全身のエネルギーを効率的に使えることをゴールとして運動することをおすすめします。
知っておくべきこと③ 育ちの影響
また、そもそも体の多くの部分が反射でしか動かせず、意思によるコントロールが入りにくくなっている方も多くいます。
その1つが、原始反射の残存です。原始反射は赤ちゃんが生まれながらに持っている自動的な動きの反応で、本来は成長とともに統合されていきます。これが大人になっても残っていると、意思とは関係なく反射的な動きや姿勢が出やすくなり、体を意識的にコントロールしようとしてもうまくいきません。
また、長年の運動不足でも、神経の使い道が痩せていき、体がうまく制御できなくなります。
そしてもう1つ大きいのが、過去のトラウマ・傷つき体験、愛着障害の影響です。これらをかかえている方は、脳の働き自体が過緊張モードに固定されやすく、体の動きもぎこちなくなりがちです。自分の体を感じることが怖くなり、感じること自体を自分で封じ込めてしまっているケースも少なくありません。
▼ 補足:HPA軸とは
このとき体の中では、HPA軸(視床下部 - 下垂体 - 副腎軸)というストレス反応系が働いています。脅威を感じると副腎からコルチゾール(ストレスホルモン)が分泌され、体を「警戒モード」に切り替える仕組みです。
本来は一時的な防衛反応なのですが、慢性的なストレスやトラウマがあると、このスイッチが常時オンに近い状態になります。すると、外から見ても危険がない状況でも、体は常に身構え続け、過緊張が標準モードになっていきます。
さらに、強い苦痛と結びついた感覚を脳が「これ以上感じない方が安全」と判断すると、感覚そのものを遮断する反応が起こります。これは体を守るための仕組みですが、結果として自分の体の状態がわからない、感じようとすると不安になる、といった状態につながります。
このような状態であれば、よりいっそう神経からのアプローチが大事になります。筋肉のトレーニングよりも先に、脳・神経からの指令の回路を整えていかなければならないからです。
この身体の根本の働きを向上させるための原則が、これまで何度も紹介してきた
「感じる」「ゆだねる」「わける」「つなげる」「もらう」
という5つの原則です。
これらの原則を意識しながら実践すること。つまり、どのような動きであっても「何をやるか」以上に「どうやるか」が大切なのです。
✏️ ここまでのまとめ
- 体の問題は筋肉より、上流の神経の指令の問題が大きい
- 「わけて動かす」は「つなげる」ための前提。全身運動が基本
- 5つの原則「感じる・ゆだねる・わける・つなげる・もらう」がカギ
このように理屈で解説すると難しく思えるかもしれませんが、これは身体の働きの重要な部分を凝縮した、とても大事な説明です。
これが理解できていれば、
- 自身のケア
- お子様の発達サポート
- 親の健康サポート
- 仕事での他人のケアやトレーニング
など、あらゆることの質が向上するはずです。
そして、この重要な考え方・原則を身につけるためには、体の基礎的な動きを、ポイントを押さえてやることが大切です。
そこでここでは、JINENボディワークの基礎的なワークを簡単に紹介します。復習的な内容ですが、ボディワークの入口の再確認としてお役立てください。
体幹のコントロールが大切

まず体幹を使えるようになることは、リラックスのためにも、運動能力向上のためにも大切です。
体幹は、ほとんどの方は固めて使っており、全身の力の流れを通す役割や、体幹から大きな力を手足に伝えるといったことができていません。
① 骨盤・背骨・頭を「軸」として動かす
まず骨盤、背骨、頭という軸上の部位をしっかり動かせるようになることが大切です。
椅子に座り、骨盤を前後に転がすように動かします。腰椎ではなく股関節(腸腰筋とハムストリングス)を使うのがポイント。骨盤が動き始めると、上半身は自然についてきます。「骨盤から動く」という感覚の入口です。
② 背骨を下から上へ、力の流れで動かす
次に、背骨を下から上へと、力の流れを通して動かせるようになることが大切です。
四つん這いで、背骨を下から上へと1節ずつ波打たせます。筋力で動かすのではなく、重心の移動に任せて動かされる感覚を大切に。背骨が「鎖」のように動き始めると、体幹から手足へ力が流れる感覚が出てきます。
③ 頭の重さを背骨・背中で支える
そして、頭の重さを背骨・背中で支えられるようにすることが大切です。
うなじを伸ばす動きと首のケアを合わせて解説しています。あごを軽く引きながら後頭部を引き上げ、首の力みではなく背骨の延長として頭を乗せる感覚をつかんでいただければと思います。首から肩の固め癖が自然とほどけ、頭が軽くなる感覚があるはずです。
ポイント:ゆっくり動かすことの意味
ポイントは、体を感じながらゆっくり丁寧に動かすことです。
速く動かすと反射的な回路を使ってしまい、いつもの癖を強めるだけになります。ゆっくり動かすと、脳の予測と体の感覚からの「感覚入力 → 統合 → 修正 → 司令」というループが高速で行われることで、神経系の働きが向上します。
ひとまず、体の軸上の骨を正しく動かせるようになると、体の動きの根幹が整い、さまざまな不調の改善から、リラックス、運動能力の向上につながります。ぜひ習慣化して続けてみてください。