前回の記事では、緊張とは「反射システムによって身体がのっとられた状態(防衛モード)」であり、そこから抜け出す第一歩として、体の一部を意識的に動かし「コントロール権を取り戻す」ことの重要性をお伝えしました。
今回はさらに一歩踏み込みます。
応急処置ではなく「そもそも緊張しにくい(防衛モードに入りにくい)体」もしくは「緊張してもすぐにリラックスできる体」を根本から作っていくための考え方です。
鍵となるのは、脳内にある「ボディマップ(身体地図)」の解像度と、「骨格の安定構造」です。
今回はボディマップを中心に説明します。
脳は「分からないもの」を警戒する
慢性的に緊張しやすい方、不安を感じやすい方の多くは、脳が認識している自分自身の身体地図(ボディマップ)が、とても大雑把にぼやけています。
背骨がどこからどこまであるのか、股関節がどう動くのか。
体の細部を感じ取れず、体全体が「ひとつの大きな塊」として脳に認識されています。
実際、私が指導する方の中にもこのタイプの方は多くいらっしゃいます。自分の体の部位や骨を正確に認識したり、動かしたりできない状態です。
コントロールできていないことを自分で把握できていなかったり、コントロールできている「つもり」になっているケースも多いです。
そして、人間の脳は「状態が把握できないもの・不確かなもの」に対して本能的に不安を抱き、警戒レベルを引き上げます。
つまり、自分の体の解像度が低い状態のままだと、脳は常に「危険かもしれない」と判断し、筋肉を固めて防衛姿勢をとり続けてしまうのです。
身体を「細かく分ける」ことで安全を証明する
この状態から抜け出すためにJINENボディワークで重視しているのが、身体を「分けて動かす」というプロセスです。
- 背骨を1本1本、波打つように動かす
- 骨盤だけを単独で転がす
- 呼吸による肋骨の広がりを感じる
- 肩甲骨を体幹から分けて動かす
このように、身体をひとつの塊として扱うのではなく、各関節や骨を「分けて」動かし、その感覚を丁寧に拾い上げていきます。
すると、脳内のボディマップの解像度が少しずつ上がり、「ここにこの骨がある」「こう動かせる」と明確に把握できるようになります。

自分の体をクリアに認識できている状態は、脳にとって「すべて制御下にある=ここは安全だ」という何よりの証明になります。
体が反射の働きによる「緊張」「防御反応」に乗っ取られることが減り、逆に緊張しても自分の意識の元にコントロール権を取り戻しやすくなっていきます。
まず分けるべき部位と動き
前回の記事では、体の一部を動かす方法を簡単に紹介しましたが、今回はもう少し詳しく説明します。
まず優先的に「分けて動かせる」ようにするべき部位は下記です。
- 背骨と体の背面の筋肉
- 胸と体の前面の筋肉
- 股関節
- 肩甲骨まわり
- 首と頭
- 足指
重複もありますが、まずはこれらが重要です。
理由はこの記事では書きませんが、反射的な緊張をゆるめる上でこれらの部位がまず重要になるということです。
また、優先的にやるべき「動き」としては下記のものです。
- 背骨を丸める反る
- 全身を丸める開く
- 全身をねじる
つまり、全身の屈曲系の動きと伸展系の動き、そして回旋系を行うこと。まずはアバウトに行い、少しずつ部位ごとにやっていくことが大切です。
具体的なやり方は、過去にSNSで配信している動きでまずは十分です。
いろいろやるより、同じやり方でも意識を深めていくことが重要なのです。
ボディワークの基本は【体を感じながらゆっくり丁寧に動かす】です。
このフレーズを覚えて繰り返していきましょう。
「分ける」の先にある「安定構造」
ただし、体を細かく分けて動かす練習をするのは1つのステップに過ぎません。
それだけでは「自分の筋力」「自分の意識的なコントロール」で体をコントロールする癖が改善されず、十分な心身のリラックスや楽な動きが身につけられません。
緊張しにくい体の最終的なゴールは、筋肉をコントロールし続けることではなく、「骨格という構造で体を支えること」であり「自動で体を楽に使えること」です。
この点については、また次の機会にまとめたいと思います。