「私は昔から人見知りだから」
「気にしすぎる性格だから仕方がない」
「頼まれると断れないのは、もう性分なんです」
長く繰り返してきた反応は、いつしか「これが自分だ」という自己像になります。そしてそのラベリングが変化の可能性まで閉じてしまうことがあります。
けれど、性格は石に刻まれた文字のように修正がきかないものではありません。性格研究が示しているのは、もっと現実的で、希望の持てる姿です。
性格には安定する面がある。同時に、大人になってからも動く面がある。
この2つは矛盾しません。
性格は「変わらない」のではなく、同じ反応が出やすい
性格特性とは、さまざまな場面で比較的一貫して現れやすい、考え方や感情、行動の傾向です。性格研究では、その変化をいくつかの方法で捉えます。
たとえば順位の安定性は、ある集団のなかで、不安になりやすさや慎重さの相対的な位置が保たれるかを見るものです。一方、平均水準の変化は、年齢とともに集団全体の傾向がどちらへ動くかを見ます。
全員が以前より少し落ち着いたとしても、人と比べたときの順番はあまり変わらないかもしれません。つまり、順位が安定していても、その人自身が変化していないとは限らないのです。
2022年の大規模なメタ分析では、順位の安定性について189研究・178,503人、平均水準の変化について276研究・242,542人のデータが統合されました[1]。
順位の安定性は人生の早い時期に高まり、成人期初めに頭打ちになりました。25歳以降にさらに安定性が増していく証拠は、ほとんど見られませんでした。一方で、平均的な性格特性には生涯を通じた変化があり、とくに情緒安定性は一貫して上昇していました[1]。
大人の性格には一定の一貫性があります。けれど、完成して固まるわけではありません。安定性と可塑性が同居している。それが現在の研究から見えてくる姿です。
介入によって動いた性格特性もある
では、年齢とともに自然に変わるだけでなく、何らかの働きかけによって性格特性は動くのでしょうか。
2017年の系統的レビューとメタ分析では、介入中の性格特性の変化を追った207研究が検討されました。平均24週間の介入に伴う変化は、平均効果量d=.37と報告されています。変化の中心は情緒安定性で、次いで外向性でした。また、介入終了後の追跡でも変化が保たれていたサンプルがありました[2]。
ただし、この結果を「どんな方法でも半年で性格を変えられる」と読むことはできません。研究の主眼は心理療法などの臨床介入で、不安症や抑うつなどを抱える人も多く含まれています。性格を変えることだけを目的にした研究ばかりではなく、症状がやわらぐことで性格尺度の得点も動いた可能性があります。もちろん、ボディワークの効果を調べた研究でもありません。
それでも、この結果には大切な意味があります。私たちが「性格」と呼んでいる傾向の少なくとも一部は、適切な時間と働きかけのなかで動きうるのです。
「性格」のなかに、長く続いた状態が混じっている
ここで区別したいのが、状態と特性です。
大勢の前で話す直前に緊張しているのは、その場の状態です。さまざまな場面で緊張が出やすい傾向が長く続くと、「緊張しやすい」という特性として捉えられます。
しかし、日常ではこの2つがきれいに分かれているわけではありません。
体がいつも身構えていると、人の表情を先回りして読み、間違えない答えを探し、自分の意見を引っ込めやすくなります。肩やあごを固め、息を止めた状態で会議に出れば、自由に話すよりも「波風を立てない」選択が増えるでしょう。
頼まれごとをされた瞬間に胸やお腹が固まり、考える余裕がなくなる人は、本当は断りたいときにも反射的に「大丈夫です」と答えるかもしれません。その反応を何年も繰り返せば、「私は押しに弱い」「人に合わせる性格だ」という自己像ができていきます。
反応が自己像をつくり、自己像が次の反応を選びやすくする。こうして同じ道が何度も使われると、それは生まれつきの性格のように感じられます。
もちろん、すべての性格傾向を身体状態だけで説明することはできません。気質、生育環境、人間関係、社会的な役割など、多くの要因が関わります。それでも、性格だと思っていたものの一部に、体が身を守るために繰り返してきた反応が含まれている可能性はあります。
性格をつくり替えるのではなく、反応の選択肢を増やす
JINENボディワークで目指すのは、内向的な人を外向的にすることでも、慎重な人を大胆な人につくり替えることでもありません。
私が現場で見てきたのは、体が防御に使う力が減るにつれて、それまで隠れていた選択肢が表に出てくることです。
以前なら人の一言に体ごと反応していた人が、すぐに言い返さず、ひと呼吸置ける。頼まれた瞬間に引き受けていた人が、「少し確認してから返事をします」と言える。人前では声が上ずっていた人が、足裏で床を感じながら、自分の速さで話せる。
外から見ると「性格が変わった」ように見えるかもしれません。しかし本人の内側では、別人になったというより、反応をひとつに決めていた圧力が弱まり、本来あった選択肢を使えるようになったという感覚に近いのだと思います。
これは、今回紹介した研究が直接証明している過程ではありません。研究から言えるのは、大人の性格にも変化する面があり、主に臨床的な介入に伴って性格尺度が動いた例が多数あるところまでです。ボディワークで特定の性格特性が変わるとは、まだ言えません。
それでも、考え方だけを変えようとして苦しくなっている人に、体から入る道は残されています。
まず「いつもの反応」が始まる瞬間を見つける
性格を変えようとする必要はありません。まずは日常で「いつもの自分」が始まる瞬間に、体で何が起きているかを見てみてください。
人に話しかける前、意見を求められたとき、メッセージの通知を見たとき。肩が上がる、息が止まる、みぞおちが固まる、足の感覚がなくなる。そうした小さな変化に気づくだけでも、「私はこういう性格だ」から「いま体がこう反応している」へ、見方を移すことができます。
そのとき、意識の1割ほどを足裏や坐骨の感覚に置いてみます。 反応を消そうとせず、床に体重を預けられる部分を探しながら、残りの意識で目の前の人と話します。これは、別の性格を演じる練習ではありません。体を置き去りにせず、いつもとは少し違う反応を選べるか確かめる練習です。
一度で大きく変わらなくてもかまいません。「今回はすぐ返事をしなかった」「今日は最後まで自分の言葉で話せた」。そんな小さな例外が重なると、自己像は少しずつ書き換わります。
「昔からこうだから」は、これまでの自分を説明する言葉にはなっても、これからの自分を決める言葉ではありません。
体に別の反応が生まれれば、選び方が変わります。選び方が変われば、人との関わり方や働き方も変わります。性格を無理につくり替えなくても、体から生き方が動き始める可能性は、いくつになっても残っています。
補足 この記事は、読者の方々の個人的な実践や学習のヒントとなる研究を紹介する目的で制作したものです。効果を保証するものではありません。また、エビデンスは最新の研究によって覆される場合や、賛否があるものもあります。学習や実践の参考程度にしてください。
参考文献
1. Bleidorn W, Schwaba T, Zheng A, Hopwood CJ, Sosa SS, Roberts BW, Briley DA (2022). Personality stability and change: A meta-analysis of longitudinal studies. Psychological Bulletin, 148(7–8), 588–619. PMID: 35834197. doi: 10.1037/bul0000365. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35834197/
2. Roberts BW, Luo J, Briley DA, Chow PI, Su R, Hill PL (2017). A systematic review of personality trait change through intervention. Psychological Bulletin, 143(2), 117–141. PMID: 28054797. doi: 10.1037/bul0000088. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28054797/