【154】貧乏ゆすりは、集中の味方 ― 微細な動きが覚醒を支える

Jul 10, 2026

はじめに:その小さな動きは「気が散っている」のか

会議中に足を揺する、ペンを回す、体を小刻みに動かす。こうした微細な動き(フィジェット)は、ふつう「集中していない」「落ち着きがない」しるしとして否定的に見られがちです。

ところが近年の研究は、この見方に修正を迫ります。フィジェットは気が散っている結果ではなく、むしろ覚醒と注意を保つための、体による自己調整の働きでありうるのです。この記事では、なぜ「動くこと」が集中を助けるのかを見ていきます。

🎯 この記事で伝えたい3つのこと

  1. 微細な動きは、覚醒と注意を保つ「自己調整」の働きでありうる
  2. うまく答えられているときほど、体は微細に動いていた、という報告がある
  3. だから「じっと固める」ことが必ずしも良いとは限らない

1. うまくいっているときほど、体は動いていた

フィジェットと認知パフォーマンスの関係を調べた研究では、興味深い結果が示されました[1]。注意と認知制御を測る課題を行いながら体の動きを計測したところ、正しく答えられた場面では、間違えた場面に比べて、フィジェットがより多く、より強く現れていたのです[1]

さらに、課題の後半では前半よりフィジェットが増え、それでも正答率は保たれていました[1]。これは、時間とともに下がりがちな覚醒を、フィジェットによって補い、集中を維持していた可能性を示唆します。研究では、フィジェットが「覚醒と注意を高める無意識の方法」として働き、要求の高い課題での持続的な注意を助けうる、と結論づけられています[1]

2. 「最適な覚醒」を、自分で作る

なぜ動くことが集中を助けるのでしょうか。ここで参照されるのが「最適な刺激」という考え方です[1]。覚醒レベルが低すぎると集中が保ちにくくなるため、脳は覚醒を適切な水準へ引き上げようとします。そして、繰り返しの微細な動きは、覚醒を高めるための最も手軽で即時的な手段として使われる、というのです。

体を小さく動かすことは、脳が自分の覚醒状態を「ちょうどよい集中の水準」へと調整するための、体からの働きかけだと理解できます。身体運動が、覚醒を安定させる神経伝達物質(ノルアドレナリンやドーパミン)の放出を高めることも知られています[1]。この視点に立つと、動きを完全に止めさせることは、その人が覚醒を保つ手段を奪い、かえって集中を妨げる可能性がある、ということも見えてきます。

JINENの言葉でいうと

この知見は、JINENボディワークの発想を別の角度から裏づけます。

まず、「じっとしているから固まる」ことの補完です。動かないことは体を固めるだけでなく、集中や覚醒という「脳の状態」の面でも不利に働きうる、ということです。適度に体を動かし続けることは、体と神経系の両方を「固まらせない」ことにつながります。

次に、動きによる神経の調整(ニューロチューニング)です。動きが覚醒を整えるということは、集中したいときに無理に体を固めるのではなく、微細な動きや姿勢の揺らぎを許すことが、かえって神経系を整える助けになりうる、ということです。

そして、「静」と「動」のバランスです。フィジェットが覚醒を上げる働きをもつということは、逆に覚醒が高すぎる(過緊張・過覚醒の)ときには、沈静の入力が必要になる、ということでもあります。JINENが状況に応じて「上げる」入力と「下げる」入力を調律するのは、この覚醒の最適点を探る営みです。じっと固めるのでも、やみくもに動くのでもなく、その時々の神経系の状態に合わせて動きの質を選ぶことが大切なのです。

補足 この記事は、読者の方々の個人的な実践や学習のヒントとなる研究を紹介する目的で制作したものです。効果を保証するものではありません。本記事はADHDなどの診断・治療を論じるものではなく、覚醒・注意の一般的な仕組みを扱っています。エビデンスは最新の研究によって覆される場合もあります。学習や実践の参考程度にしてください。

参考文献

  1. Son C, et al. (2024). A quantitative analysis of fidgeting in ADHD and its relation to performance and sustained attention on a cognitive task. Frontiers in Psychiatry, 15, 1394096. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC11246969/

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