はじめに:骨は動かない「骨組み」ではない
骨というと、体を支える硬い「支柱」、あるいは変わらない「骨組み」をイメージするかもしれません。ところが実際の骨は、生涯にわたって絶えず造り変えられている、生きた動的な組織です。
そして、その造り変えを方向づける最大の要因のひとつが、日々どんな力(荷重)を受けているかです。この記事では、骨が力に応じて自らを造り変えていく仕組みと、それがJINENの「骨で支える」という発想とどうつながるのかを見ていきます。
🎯 この記事で伝えたい3つのこと
- 骨は生涯にわたって造り変えられる、生きた組織である
- 骨は自ら力を「感じ」、荷重に応じて構造を最適化している
- だから、姿勢と動きの質は、長い目で見て骨の健やかさにも関わる
1. 骨は加わる力に適応する
19世紀に提唱された「ヴォルフの法則」は、健康な骨は、それに加わる荷重に適応して構造を変えるという原則です。荷重が増えれば、骨はより強くなるように自らを造り変えます。ある医学の総説でも、「骨は不活性な構造物ではなく、生涯を通じて変化し続ける」「機械的な荷重の程度に適応し、荷重が増えると内部の構造が強くなる」と述べられています[1]。
骨の造り変え(リモデリング)には、体の要求に合わせて構造を調整する、微小な損傷を修復する、カルシウムのバランスを保つ、という役割があります[1]。荷重への適応は、その第一の役割にあたります。骨の形や密度は、生まれつき固定されたものではなく、日々どう使われ、どんな力を受けているかによって、少しずつ変化していくのです。
2. 骨は自分で力を「感じている」
では、骨はどうやって「力」を感じ取り、それを構造の変化に変えているのでしょうか。ここで中心的な役割を果たすのが、骨のなかに最も多く存在する「骨細胞(こつさいぼう)」です。骨細胞は、骨にかかる力を感じ取るセンサー(メカノセンサー)として働き、機械的な力を生化学的な信号へと変換します[1]。この信号が、骨を造る細胞(骨芽細胞)や骨を溶かす細胞(破骨細胞)に「どこをどう造り変えるか」を指示することで、骨は荷重に応じて適応していきます[1]。
つまり骨は、加わった力を「感じて」「造り変える」という一連の情報処理を、細胞のレベルで行っているのです。
興味深いのは、あらゆる荷重が同じように骨を強くするわけではない点です。骨の反応は、荷重の大きさ・持続時間・加わる速さに左右され、静的な(ずっと同じ)荷重よりも、動的で周期的な(繰り返しの)荷重の方が骨形成を強く促すことが示されています[1]。骨にとって意味のある刺激は、ただ強いだけでなく、変化し、繰り返される質を伴った荷重なのです。
JINENの言葉でいうと
この骨の生理学は、JINENボディワークの身体観にいくつもの裏づけを与えます。
まず、「骨支点」「骨格力」という発想の実体です。骨は、力を受け、力を伝えるために造られ、そのように適応していく組織です[1]。筋肉で力んで支えるのではなく、骨格そのもので力を受け、床からの反力を骨を通して伝えるというJINENの考え方は、骨本来のあり方に沿っています。骨を効率よく積み上げて立つことは、骨にとって無理のない、自然な力の受け方でもあります。
次に、「使い方」が骨の質を決めるということです。過緊張で骨に偏った負荷をかけ続ければ、その偏りに応じた適応が起こりえます。逆に、上下にまっすぐ通った軸(キープニュートラル)で骨に素直に力を通せば、骨にとって無理のない荷重の受け方になります。JINENが姿勢と動きの質を大切にすることは、骨の適応という長い目で見た視点からも意味をもちます。
そして、「動き続ける」ことの意味です。骨形成を促すのは、静的ではなく動的で周期的な荷重でした[1]。じっと固まっているより、体を適切に動かして骨に繰り返しの刺激を与えることが、骨の健やかさにつながると考えられます。
補足 この記事は、読者の方々の個人的な実践や学習のヒントとなる研究を紹介する目的で制作したものです。効果を保証するものではありません。骨粗鬆症などの疾患の予防・治療効果を保証するものではなく、エビデンスは最新の研究によって覆される場合もあります。学習や実践の参考程度にしてください。骨の健康に不安がある場合は、医療機関への相談をおすすめします。
参考文献
1. Physiology, Bone Remodeling. StatPearls (NCBI Bookshelf). https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK499863/ / Chen JH, Liu C, You L, Simmons CA (2010). Boning up on Wolff's Law: Mechanical regulation of the cells that make and maintain bone. Journal of Biomechanics, 43(1), 108–118. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0021929009005077