【068】SNSの炎上はなぜ起きるのか ― オンラインの過激化と体の防衛反応

Apr 27, 2026

キーボードの向こうの「怒り」

SNSを開けば、誰かが誰かを批判している。些細な言動が「炎上」し、見ず知らずの人々が寄ってたかって攻撃する。冷静に見ればそこまで言う必要はないのに、オンラインでは驚くほど過激な言葉が飛び交います。

「ネットの人は怖い」で終わらせるのは簡単ですが、なぜオンラインの空間では意見が極端化し、攻撃的になりやすいのかを考えてみましょう。そこには、066(白黒思考)と067(正しさへの依存)で解説したメカニズムが、増幅された形で作動しています。

オンライン脱抑制効果:画面越しだと外れるブレーキ

対面では言わないことを、SNSでは平気で書いてしまう。この現象は「オンライン脱抑制効果」として研究されています 1

その要因は:

  • 匿名性:自分が誰であるか明かされないことで、社会的制裁のリスクが下がる
  • 非同期性:リアルタイムの対話ではないため、相手の表情や声のトーンが見えない
  • 不可視性:相手を「人間」としてではなく「テキスト」として認識する
  • 想像上の聴衆:「見ている人たち」の存在が、発言をパフォーマンス化する

体のレベルで何が起きているか

この現象をJINENの視点で見ると、SNSの構造自体が防衛モードを誘発しやすいことがわかります。

① ニューロセプションの誤作動(007参照) 対面では、相手の表情、声のトーン、体の動きからニューロセプションが「安全」のシグナルを受け取ります。しかし、テキストだけの情報では安全シグナルが極端に少ない。文字だけのメッセージは、ニューロセプションにとって「不確実な環境」であり、防衛モードに傾きやすいと私は考えています。

② 交感神経の活性化 怒りを感じたとき、体は交感神経優位(戦闘モード)に入ります。心拍が上がり、筋肉が緊張し、攻撃の準備が整います。しかし、SNS上では実際に「戦う」身体的行動がない。怒りのエネルギーが身体的に発散されず、指先のタイピングに集約されます。結果、身体的行動なしに交感神経だけが亢進し続ける状態になります。

③ 白黒思考の強化(066参照) 防衛モード(交感神経優位)では、認知の柔軟性が低下し、二項対立的な判断に傾きます。「この人は敵か味方か」「この意見は正しいか間違いか」、SNSの短文は、そのグレーゾーンのない構造によって、白黒思考をさらに強化します。

④ 「正しさ」の報酬系(067参照) SNSの「いいね」や「リツイート」は、「自分は正しい」という感覚に報酬を与える仕組みです。正義感に満ちた発言がバズるとドーパミンが放出される。この報酬回路が、さらなる過激な発言を促す、デジタルな正義感の依存回路が形成される可能性があります 2

「道徳的怒り」の増幅装置

デジタル環境における道徳的怒りの研究から、オンラインでの「義憤」は対面の場合よりも低コストで発動し、強く持続する傾向があることが指摘されています 2

対面で怒りを表明するには:

・相手の反応を直接受け止める覚悟がいる - 表情や声に出すための身体的なエネルギーが必要 -

・相互作用の中で自然と収束する

SNSでは: 

・タップひとつで怒りを表明できる

・相手の痛みを見ずに済む

・反応が「いいね」という報酬として返ってくる - 怒りが収束せず、エスカレートしやすい

体から「オンラインの過激化」に対処する

JINENの視点からの提案は、「SNSをやめろ」ではなく、「SNSを使うときの自分の体の状態に気づく」ことです。

  • 体のチェックイン:SNSを開く前に、自分の呼吸、肩の位置、顎の噛みしめ(059参照)に注意を向ける。すでに緊張状態なら、まず体をゆるめてからスクリーンに向かう
  • 怒りの身体的シグナルに気づく:心拍が上がっている、拳が握られている、呼吸が浅くなっている、これらに気づいたら、「今、防衛モードに入っている」と認識する
  • 書き込む前に呼吸する:怒りのまま反射的に書き込まず、3回深呼吸してから判断する。010の迷走神経ブレーキを踏む
  • 体を動かす:怒りのエネルギーを言語ではなく身体運動に変換する。立ち上がる、歩く(049参照)、ゆする

スマホを握りしめて画面を睨んでいるとき、あなたの体は「戦闘態勢」に入っている。 その状態で書いた言葉が、相手を傷つけ、自分も消耗させる。体の状態を変えることが、オンラインでの振る舞いを変える第一歩になるかもしれません。

補足 この記事は、読者の方々の個人的な実践や学習のヒントとなる研究を紹介する目的で制作したものです。効果を保証するものではありません。また、エビデンスは最新の研究によって覆される場合や、賛否があるものもあります。学習や実践の参考程度にしてください。

参考文献


  1. Suler, J. (2004). The online disinhibition effect. CyberPsychology & Behavior, 7(3), 321–326. 

  2. Crockett, M. J. (2017). Moral outrage in the digital age. Nature Human Behaviour, 1(11), 769–771. 

  3. Porges, S. W. (2011). The Polyvagal Theory. W. W. Norton. 

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