【004】「頭で考えるな、体で感じろ」― 脳の暴走を止める方法

Mar 30, 2026

止まらない頭の中のおしゃべり

夜、布団に入った瞬間から「明日のプレゼン大丈夫かな」「あの時もっとこう言えばよかった」と、頭の中で終わらない独り言が始まる。電車に乗っているとき、散歩しているとき、誰かと話しているときですら、意識はどこか別の場所にさまよっている。

これは特別なことではありません。大規模な心理学の調査から、人は起きている時間の実に約47%を「いま目の前にあること」以外のことを考えるマインドワンダリング(心のさまよい)に費やしていることが分かっています。そして驚くべきことに、この心のさまよいは、何をしているかに関係なく、不幸感の直接的な原因であることが実証されているのです [1]

つまり、頭の中のおしゃべりが止まらないこと自体が、私たちを不安にし、疲れさせ、不幸にしている、。

脳の「アイドリング」が暴走する

では、このマインドワンダリングは脳のどこで起きているのでしょうか。

脳科学の研究から、脳には外的な課題に取り組んでいないとき(ぼーっとしているとき)に特に活性化する「デフォルトモードネットワーク(DMN)」と呼ばれる神経回路が存在することが発見されています [2]。DMNは主に内側前頭前野や後帯状皮質といった領域で構成され、自己参照的な思考、過去の反芻、未来への不安、他人との比較、を生み出しています。

DMNはいわば脳の「アイドリング」です。エンジンを切っていないけれど、どこにも進んでいない状態。そして現代人の問題は、このアイドリングが空回りして暴走していることにあります。

慢性的な痛みを抱える方にも、DMNの過活動が見られることが報告されています。痛みを反芻し、将来への不安を増幅させるDMNの暴走が、痛みの体験そのものを悪化させてしまうのです。

DMNを止める「スイッチ」

では、暴走するDMNをどうすれば止められるのか。

脳画像研究(fMRI)から、瞑想の訓練を積んだ人では、DMNの活動が有意に低下していることが確認されています [3]。身体の感覚に注意を向け続ける訓練が、自己参照的な思考回路を物理的に静める効果を持っているのです。

ここで重要なのは、DMNを止めるために必要なのは「何も考えないこと」ではない、ということです。何も考えまいとすればするほど、かえって思考は活性化します。鍵は、意識の向き先を変えること。頭の中の思考から、体の微細な感覚へとフォーカスを移すことです。

JINENの「軽集中」はDMNのブレーキ

JINENボディワークでは、この状態を「軽集中」と呼びます。

座禅のように「無」になろうとするのではなく、体の微細な感覚、足裏の圧、呼吸の流れ、背骨の揺れ、に「そっと」注意を留め続ける。強く集中するのではなく、かといって注意を手放すのでもない。このちょうどよい「軽さ」がポイントです。

この軽集中の状態では、意識が「いまここの体」に留まっているため、DMNが暴走する余地がなくなります。未来への不安も、過去への後悔も、「いま足裏に感じている床の温度」の前では出番を失うのです。

JINENでは、これを「動きながらの瞑想(動的瞑想)」として実践します。ゆっくり体を動かしながら、内側の感覚を感じ続ける。指先の温度、お腹の重み、背中の広がり。意識を体に残し続けることで、脳のアイドリングは自然に静まっていきます。

体で感じている限り、頭は暴走できない。

これが、JINENが「頭で考えるな、体で感じろ」と繰り返す科学的な理由です。

補足
この記事は、読者の方々の個人的な実践や学習のヒントとなる研究を紹介する目的で制作したものです。効果を保証するものではありません。また、エビデンスは最新の研究によって覆される場合や、賛否があるものもあります。学習や実践の参考程度にしてください。

参考文献


  1. Killingsworth, M. A. & Gilbert, D. T. (2010). A wandering mind is an unhappy mind. Science, 330(6006), 932.↩︎

  2. Raichle, M. E. et al. (2001). A default mode of brain function. Proceedings of the National Academy of Sciences, 98(2), 676–682.↩︎

  3. Brewer, J. A. et al. (2011). Meditation experience is associated with differences in default mode network activity and connectivity. Proceedings of the National Academy of Sciences, 108(50), 20254–20259.↩︎

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