なぜ「体からのセルフケア」なのか
ありがたいことに、私たちは医療が発展した便利な世の中に生きています。体調が悪くなれば病院に行ける。たいていの場合、高額な医療費に苦しむこともない。保険制度が多くの人を守ってくれている。
この安心感は、間違いなく現代社会の偉大な財産です。
しかし、ふと立ち止まって考えてみたいことがあります。その安心感は、私たちから「自分で自分を整える力」を奪ってはいないでしょうか。
「お任せ」の時代の落とし穴
体の不調を感じたら病院へ行く。薬をもらう。施術を受ける。それ自体は正しい選択です。しかし、そこに主体性があるかどうか。
「先生にお任せします」
「薬を飲んでいるから大丈夫」
「年に一度の健康診断で問題なかったから安心」
こうした受け身の姿勢が、いつのまにか自分の体への無自覚を生んでいないでしょうか。
自分の体が今どんな状態なのか。どこが固まっていて、どこが使えていないのか。呼吸は深いか浅いか。足裏はちゃんと地面を感じているか。今日の自律神経のバランスはどうか。
こうした問いを、日常的に自分に向けている人はどれくらいいるでしょう。
持続可能な社会のために
私は医療の意義や価値を一切否定するつもりはありません。医療は命を救い、苦しみを減らし、生活の質を守る不可欠なシステムです。
しかし同時に、目を背けるわけにいかない現実もあります。
少子高齢化が進む中、増大し続ける医療費は政府の財政を圧迫し続けています。このシステムは、長期的には持続しがたいものになりつつあると、多くの専門家が指摘しています。
もし私たち一人ひとりが、自分の力でもう少しだけ自分をケアできるようになったら、病院に行く前に、自分でできることがあったら。
それは個人の健康にとっても、社会全体の持続可能性にとっても、意味のあることではないでしょうか。
「体からできること」を、誰でもできる形で
私の仕事のひとつは、自分で自分を整えるための具体的な手法、とくに「体からできること」を、誰でもできる形でまとめ、伝えることです。
なぜ「体から」なのか。
それは、002の記事で解説したように、体を変えれば心が変わるからです。006の記事で紹介したように、迷走神経の80%は体から脳に向かっています。体の状態を整えることは、脳の状態を整えることに直結している。
そして「体からのアプローチ」は、特別な器具も、高額な費用も、専門的な知識も必要としません。
- 呼吸を深くすること(010参照)
- 足裏で地面を感じること(014参照)
- ゆっくり動くこと(029参照)
- 背骨を一椎ずつ動かすこと(044参照)
- 穏やかな環境で体をゆるめること(041参照)
これらは、今日から、自宅で、一人でも始められることです。
このシリーズの目的
このエビデンス記事シリーズは、そんなスタンスのもとで制作しています。
多くの人が自ら自分をケアする上で役立つように、JINENボディワークの実践知を学術的知見と結びつけて論じたものです。
000の記事で書いたように、エビデンスは「参考」であって「絶対」ではありません。しかし、「なぜこのワークが効くのか」を科学の言葉で理解できれば、実践への確信が深まり、継続しやすくなる。そして、自分の体で起きていることを「知っている」だけで、不安は減り、体への信頼は増す。
自分の体を自分で感じ、自分で整えられる人になること。 それが、このシリーズを通じて伝えたいことです。
補足
この記事は、読者の方々の個人的な実践や学習のヒントとなる研究を紹介する目的で制作したものです。効果を保証するものではありません。また、エビデンスは最新の研究によって覆される場合や、賛否があるものもあります。学習や実践の参考程度にしてください。