過緊張・不調の正体と解決策:感覚刺激と「アバウトな体幹の運動」から積み重ねよう

Dec 18, 2025

努力の方向性が間違っている

「姿勢を良くしようと意識すると疲れる」

「力を抜こうとすればするほど、体が固まる」

「人前でうまく話せず、体もぎこちなくなる」

長年、慢性的なコリや疲れ、生きにくさを抱える多くの人々は、それを自身の「努力不足」や「性格の問題」だと捉えることが多いかもしれません。

しかし、最新の神経科学の見地から考えると、それは大きな誤解です。

問題は意志の弱さにあるのではありません。

脳神経の一種の「配線ミス」と、自律神経という「OS(基礎的なシステム)」のバージョン不適合にあるといえます。

この記事では、神経の発達と運動と脳の関係、自律神経の進化を紐解き、なぜ現代人が「不自然な身体(過緊張)」に陥るのか、そしてどうすれば大人になってからでも「自然体(JINEN)」を取り戻せるのか、そのメカニズムと実践法を詳しく解説します。

体をコントロールする仕組みは二重構造になっている

〜「マニュアル運転」と「自動運転」〜

人間のあらゆる運動、つまり日常姿勢からスポーツまでのすべては、進化の歴史が異なる2つの神経回路によって支えられています。

1. 皮質脊髄路(CST):意識的なマニュアル運転

  • 特徴: 霊長類・ヒトで発達した新しい回路。

  • 機能: 指先の細かいコントロール(巧緻運動)、道具の使用、意識的なフォームの修正。

  • 性質: 正確だが、エネルギー消費が激しく、処理速度が遅い。

2. 網様体脊髄路(RST):無意識の自動運転

  • 特徴: 魚類・爬虫類からある古い回路。

  • 機能: 重力に抗して立つ、歩く、全身を連動させる大きく全体的な動き(粗大運動)。

  • 性質: 非常に省エネで、反射的に高速処理を行う。

3. APA(予測的姿勢制御):両者をつなぐ架け橋

本来、立つ・歩くといった基本動作は、RSTによる「自動運転」で行われるべきです。

これを可能にするのがAPA(Anticipatory Postural Adjustment)です。

APAとは、手足を動かすコンマ数秒前に、脳が無意識に体幹を固めてバランスを確保する「予測機能」です。APAが正常に働くことで、CSTは姿勢維持の雑務から解放され、細かい作業に専念できます。

逆に、APAなどの無意識下での体のコントロールがうまく働かない場合、いちいち「背筋を伸ばそう」「顎を引こう」などと意識しなければならず、よけいなエネルギーを消耗します。集中力も削られます。

発達のプロセスと「バグ」の発生

〜なぜ自動運転システムがインストールされないのか〜

人間は、APAという高度なプログラムを持って生まれてくるわけではありません。生後の発達過程で、後天的に獲得するものです。

1. 正常な発達プロセス(原始反射の統合)

  • 初期(Ver.1.0): 赤ちゃんは「原始反射」で動きます。これは「大きな音がしたらビクッとする」ような、生存のための緊急プログラムです。

  • 統合(Ver.2.0への移行): 成長に伴い、大脳皮質が発達し、原始反射に対して「抑制(ブレーキ)」をかけます。

  • 完成: 反射が抑え込まれたことで、RST(網様体脊髄路)は「予測(APA)」という高度な機能へとアップデートされます。

2. 現代の発達不全(発達障害・DCD)

現代の「動かない環境」「感覚刺激の不足」あるいは「不適切な養育環境」により、このプロセスが阻害されるケースが増えていると思われます。

  • 原始反射の残存: 脳への適切な入力不足により、古い反射回路が「刈り込み」されずに残ります。

  • APAの未形成: 常に反射的なノイズが入るため、脳は「予測」を学習できません。

  • 代償動作(過緊張): 自動で立てないため、本人は無自覚のうちにCST(意識)を使って、筋力で無理やり体を固めて姿勢を保ちます。

これが、「運動が苦手」「疲れやすい」「姿勢が悪い」という状態の神経学的な正体です。

これは「自動運転機能が故障した車を、常に手動でハンドル操作し続けている」ような状態といえます。

自律神経の進化と「安心」

〜ポリヴェーガル理論によるOSの解説〜

パソコンに例えると、運動回路(ハードウェア)を動かすには、適切なOS(自律神経)が必要です。進化の歴史において、自律神経は運動機能と共に発達してきました。

1. 進化の3段階

  • ステージ1(古代魚):背側迷走神経

    生命の危機に「凍りつく(不動化)」反応。代謝を下げて生き延びる。死んだふり。

  • ステージ2(爬虫類〜初期哺乳類):交感神経

    「闘争・逃走」反応。爬虫類のホルモン主導の遅い反応から、哺乳類で高速な神経システムへと進化。
    筋肉を一気に緊張させて危機から逃げるか、外敵と戦うか、という体のモードに切り替わる。

  • ステージ3(高等哺乳類・ヒト):腹側迷走神経

    「社会交流・安心」。最も新しい神経。交感神経の暴走を抑制(ブレーキ)し、リラックスしつつも活動できる状態を作る。

2. 腹側迷走神経と社会性の「髄鞘化」

人間の情緒やコミュニケーション能力は、精神論ではなく、この腹側迷走神経の「髄鞘化(絶縁テープによる高速化)」に依存しています。

親との適切な関わりによってこの神経が発達すると、表情筋や発声、会話を「聴く耳」の働きが正常に機能します。

逆に、トラウマや慢性ストレスでこの髄鞘化が未発達であったり、使われないことで機能が劣化すると、「表情が能面になる」「人の声が聞き取れない」「常に不安」という状態に陥ります。

包括的な機能不全のメカニズム

〜心身の不調はこうしてリンクする〜

ここまでの議論を統合すると、現代人が抱える複合的な不調の全体像が見えてきます。

1. 「抑制(ブレーキ)」の欠如

運動系では「皮質による反射の抑制」ができず、自律神経系では「腹側迷走神経による交感神経の抑制」ができません。

その結果、体は常にビクつき(反射残存)、心は常に焦っている(交感神経暴走)、もしくはフリーズ状態(力が入らない、無気力)という「ダブル・暴走状態」になります。

2. 神経の働きの不足・劣化

神経回路は「使わなければ育たない・衰える」性質があります。

  • RST(網様体)の髄鞘化不足 → とっさの動きができない、体幹が弱い、動きがぎこちない、傷めやすい。

  • VVC(腹側迷走神経)の髄鞘化不足 → 人と目が合わせられない、人や社会への強い不安。

3. 自律神経と運動神経の連関

自律神経と運動神経は相互に関係しています。

不安(交感神経ON)を感じると、脳幹の網様体が興奮し、筋肉のトーン(緊張)を強制的に引き上げます。

この状態では、どれだけ意識的に「力を抜こう」としても、生理学的に不可能なのです。

解決策としてのボディワーク

〜大人のための神経再構築ロードマップ〜

慢性的な緊張や不安、体の不調に悩まされてきた方は「自分の生い立ちに問題があったのかもしれない」と、さらに悩まされるかもしれません。

しかし希望はあります。

成人の脳にも「神経可塑性」が備わっています。 正しい順序で刺激を与えれば、錆びついた回路が復活しOSがアップデートされます。

簡単にいえば、大人でも神経の機能が改善し、ここまで解説したような心身の問題が改善される可能性は十分にあるということです。

私がその最適解として考えているのは、下記のようなプロセスを経ることです。

Step 1:感覚入力と安全基地

  • 目的: 自律神経のOSを「安心モード」に書き換える。

  • 実践: 床や壁、反力を感じる「ゆだねる」運動、転がりや揺れ、ゆっくりとしたリズム運動による前庭覚などへの刺激、皮膚への刺激。

  • メカニズム: 物理的な刺激で腹側迷走神経を活性化させ、「ここは戦場ではない」と脳幹に教え込む。

Step 2:粗大運動と反射の解放

  • 目的: 眠っていたRST(網様体脊髄路)を叩き起こす。

  • 実践: 這う、転がる、背骨を波打たせる(キャット&カウなど)、関節を1つ1つ感じながら動かす。

  • メカニズム: 原始的な動きをあえて行うことで、残存していた反射の働きを意識的なコントロール下へと置き換えていく。体幹主導の連動性を取り戻す。

Step 3:予測とエラー学習

  • 目的: 小脳の内部モデルを更新し、APA(自動制御)を獲得する。

  • 実践: 四つ這い、動物的な運動など、普段と違う姿勢でバランスをとる運動、モノを振って体が「揺さぶられる」運動など。

  • メカニズム: 「おっとっと」という予測誤差(エラー)こそが、新しい神経回路(髄鞘化)の最大の刺激となる。

Step 4:統合と微細運動

  • 目的: CST(意識)とRST(無意識)の最適な分業。

  • 実践: 安定した体幹の上での、繊細な身体操作(武術、ダンス、演奏など)。

  • メカニズム: 土台(RST)が安定したことで、初めて意識(CST)が過剰介入をやめ、本来の創造的な活動に使用される。

補足:対人関係を学ぶ難しさ

腹側迷走神経系の発達のためには、安心できる対人関係を持続的に持つことが欠かせません。

しかし、人や社会への緊張・不安が強い段階では、他人と関わるのは難しく、そもそも対人関係を学びにくいというパラドックスがあります。

そのため、まずは安心できる環境で、自分ひとりで行えるセルフケアから行うことが大切です。それが上記の4つのステップです。

その上で対人交流に臨むことが大事だと考えています。

弱さは進化の過程である

あなたが今感じている「弱さ」や「うまくいかなさ」は、これまで無理やり使ってきた「代償回路(過緊張)」が限界を迎えているサインかもしれません。

しかし、それは「あなたの本来の脳・体を目覚めさせる」ための絶好のチャンスでもあります。

JINENボディワークは、単なる健康体操ではありません。

進化の過程で獲得した「生物としての土台(網様体・腹側迷走神経)」を、簡単な体幹の体操を通じて、もう一度丁寧に積み直す「自己再構築」です。

「頑張って動かす」のをやめ、内側から湧き上がる「自然な動き」に身をゆだねたとき、身体と心はかつてない自由を獲得します。

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