自律神経、ポリヴェーガル理論、原始反射統合(神経発達)、無意識下での身体の制御、整体・十二種体型など、バラバラに論じられていることは実はつながっています。
このような話題をもっと知りたいというお話を伺ったため、まだざっくりとしたまとめですが、こちらにメモしておきます。
最後の「まとめ」だけでも読んでみてください。
1. 現代人の誤解と実態
多くの人は「人間の思考や感情は、脳という独立的な指令器官によるもので、身体の状態とは関係ない」というイメージを持っているのではないかと思います。
しかし、実際には身体の状態、特に内臓や自律神経(身体のOS)からの深い影響を受けています。これが感情や思考の根っこになっているということです。
表に見える表情、コミュニケーション、感情表現、思考、姿勢や動きなどは、脳(大脳皮質)の指令によって一時的に無理やり形を変えることは可能です。
しかし、これはエラーをごまかしているに過ぎず、本質的には身体と無意識下での脳神経の働きに影響を受けています。
2. 身体による支配と「二層構造」
私たちの脳の働き、思考や感情、コミュニケーションの多くは、身体的な影響を相当に受けています。 人間の制御システムは以下の二層構造になっています。
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① 身体と中枢神経による無意識下での制御(土台)
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② 脳(皮質系)の意識的な制御(上部構造)
①が②の土台として非常に多くの領域を支配しており、①が乱れている状態で、②(自分の意志)で無理やりコントロールしようとしても「ごまかし」にしかなりません。
痛みを我慢しても、内臓の不調が続くなら姿勢は歪みます。
深い所(自律神経というOS)で「凍り付き・死んだふり」モードになってるのに、表面的に明るくふるまってもいずれ無理がきます。
3. 内受容感覚と自律神経のモードエラー
思考や感情の根っこには「内受容感覚(身体内部の感覚)」があります。
本来、内受容感覚はホメオスタシス(恒常性維持)を指針に変化し、幸福に生きるために思考や感情を変化させるものです。
つまり、生物として「よりよく生きる(生存し子孫を残す)」方向へと、思考や感情が強く引っ張られているということです。
この内受容感覚からの異常の信号を脳が受け取ると、思考や感情もそちらへ大きく引っ張られます。そのため、ネガティブな思考を思考だけで変えようとしてもなかなか変わりません。
内受容感覚が異常な信号を送る状態、つまり「不快」といった信号が送られる状態とは、
- 内臓の不調や外傷
- ニューロセプション(神経による感知)の反応によって、身体のOSである「自律神経モード(交感神経や背側迷走神経)」が防衛的な状態に切り替わり、そこから元に戻れなくなっている
といった状態である可能性があります。
しかし、現代人であれば不快な身体状態を「正常」だと誤認し、慣れてしまっている(ソマティック・マーカーの誤学習)ということもあると思います。
4. 構造への波及:自律神経OSの進化階層と十二種体型(仮説)
身体の総合的な状態は、自律神経系というOSが制御しています。
このOSには進化の段階に応じた3つの層(階層)があり、どの層が優位になっているかによって、身体への負担のかかり方と、そこから生まれる姿勢の傾向が決まると考えられます。
私が学んだ身体均整法という整体の一種では十二種体型といった体型(姿勢の歪み方)での分類がありましたが、こういった体型のタイプも、自律神経や内臓の問題と結びついたものであると考えられます。
【前提:自律神経の3つのOS層】
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背側迷走神経系(最も古い爬虫類のOS): 「死んだふり・凍り付き・不動化」をつかさどる。
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交感神経系(哺乳類のOS): 「闘争・逃走・可動化」をつかさどる。
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腹側迷走神経系(最も新しいOS): 「交流・回復・安心」をつかさどる(本来の健康な状態)。
トラウマ体験、傷つき、生い立ちや成人後の過度なストレス体験によって、OSが下位のモード(背側や交感)に固定され、上位のモード(腹側)へ切り替わらない期間が長く続くと、特定の内臓機能に負担が蓄積し、それが姿勢の歪みとして表現されていくと思われます。
内臓への負担は内臓体性反射というメカニズムで、特定の筋肉を緊張させます。これがいわゆる「体の歪み」へと繋がります。
A. 背側迷走神経系(不動化OS)優位のケース
生命の脅威や逃げ場のないストレスに対し、感覚を遮断してエネルギー消費を極限まで抑えるモードです。
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影響を受ける臓器: 消化器系全般(胃腸の蠕動運動停止)、横隔膜(呼吸の凍結)、骨盤内臓器(生殖器・排泄機能の停滞)。
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身体表現と歪み: 内臓を守るための防御反射(屈筋優位)と、抗重力筋の機能低下による「屈曲」が生じます。
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歪み:消化器や呼吸器を守るように背中が丸まる(円背)、頭が前に落ちる姿勢。
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もしくは骨盤を閉じて核心部を守る、あるいは力が抜けて開きっぱなしになる(排泄・生殖器の不調)。
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特徴: 全体的に「重力に負けている」印象を与え、無気力や抑うつ感を伴う姿勢となります。
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B. 交感神経系(可動化OS)優位のケース
脅威に対して積極的に対抗する、あるいは逃げるために、全身を過覚醒させるモードです。
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影響を受ける臓器: 肝臓(エネルギー動員による充血)、副腎・腎臓(ストレスホルモンの過剰分泌)、心臓・肺(高拍動)。
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身体表現と歪み: 即座に動けるように筋肉を緊張させ、特定の方向へ重心を偏らせる「伸展・回旋・側屈」が生じます。
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歪み: 肝臓(右側)の重みやうっ血をかばい、体をねじることでバランスを取る姿勢。イライラや怒りの抑圧に関連しやすい。
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胃の不快感や自律神経の昂ぶりから、身体を左右どちらかに傾ける(側屈)姿勢。
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脳の過活動(思考過多)により、首や頭部に緊張が集中する姿勢。
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特徴: 筋肉が「鎧」のように硬く張りつめ、常に何かに備えているような緊張感を伴う姿勢となります。
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5. 運動系・神経発達の問題(制御のエラー)
さらに、これと深く絡み合うのが、原始反射と神経発達の問題です。
子ども時代の運動が不十分だと、神経発達のアンバランスが生じます。
具体的には、
- 網様体脊髄路から皮質脊髄路への発展(原始反射統合)
反射的な動きが、意識的な「動きのコントロール」になっていく。 - APAなどのフィードフォワード制御
バランスを崩しそうなときに、前もって体幹を安定させる反射の働きなど。
といった必要な機能が正しく獲得されません。
これによって、以下の2つの重大な問題が発生します。
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① 物理的・心理的な「不確実性」(APAの影響) APA(予測制御)が働かないため、動くたびに身体は「予期せぬ揺れ・衝撃」を受け続けます。脳にとって予測不能な状態は「恐怖」です。つまり、姿勢制御ができないことは、物理的なグラつきだけでなく、常に「わけのわからない不安」を脳に与え続ける原因となります。
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② 認知リソースの枯渇と前頭前野の機能低下 「反射による身体の緊張」や「無意識での姿勢制御の欠如」をカバーするために、皮質(脳の意識的な部分)のリソースが常に食われ続けてしまいます。 特に、感情や衝動を抑制する前頭前野が疲弊するため、イライラが抑えられない、ネガティブな思考が止まらない(反芻思考)といった状態につながることも考えられます。
まとめ
この認知リソースの無駄づかいいと脳への過剰な負担が、脳のオーバーヒート(熱の停滞)による首・頭部の緊張を生み、「前後型」的な姿勢の悪化や、自律神経のさらなる狂いへと結びついていくと考えられます。
つまり慢性的な不調や緊張・不安、姿勢の歪みといった「よくわからない・なかなか改善しない心身の問題」の背景には、このような根本的な身体の働きが隠れている場合があるということです。
とはいえ、どのような身体の反応もそれは「生き残るために選択されたもの」といえます。そのため、それ自体に善悪はなく、むしろ「生き残るために、この反応が出ていたのだな」と自分の身体を理解し、無意識下での働きに感謝すべきでしょう。
思考や感情レベルの「表現」と、実際の無意識下での身体的な「表現」つまり姿勢や動きの歪みやぎこちなさは、関係はしていても区別するべきものです。
そして身体から読み取れる情報から、本当に必要な根本的アプローチを選択していくべきだろうと思います。
私はその1つがボディワークだと考えています。
歪みは椎骨に出ますので、椎骨の1つ1つの硬結をやわらげるように体幹を動かすことが大事ですし、ゆっくり動いたり、体を感じながら動かすことが、原始反射の影響を減らしたり、内受容感覚を正常化し豊かに感じ取ることにつながります。
また、そこからより発展的に「揺れ」「バランス」「不規則な動きへの対応」といった運動をするとAPAといった「無意識下での身体制御」の向上になりますし、さらに運動を通じて人と交流することができれば、背側迷走神経系、交感神経系、腹側迷走神経系の働きをうまく切り替えられるようになり、体が「安心・回復・幸福」なモードに入りやすくなっていきます。
その結果として内臓負担が減れば、慢性的な不調が改善し姿勢の歪みがなくなり、バランスが取れた均整な身体へとなっていくでしょう。
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